にくゑ-断片

■断片17|俊夫の変化

【日記より】
 俊夫の様子がおかしい。
 このところ、夜中になると台所に立って何かを探している。
 「腹が減って眠れない」と笑うのだけれど、その笑顔が張り付いた仮面みたいに見える。

 昨日は、まだ火の通っていない肉を口に入れていた。
 血の匂いに顔をしかめた私を見て、彼は「大丈夫だ、うまい」と言った。
 俊夫は生の肉なんて絶対に食べられない人だったはずなのに。

 陽太が心配そうに「お父さん、変だよ」と言った。
 そのとき俊夫は笑った。
 けれど、目は笑っていなかった。
 陽太が怯えて私の背中に隠れたのを見て、胸が締め付けられた。

 夜、布団に入っても俊夫の呼吸音が落ち着かない。
 犬が唸るみたいに低く鳴り、時々、舌打ちのような音が混じる。
 私は耳を塞いで寝たふりをした。

 明かりを落とした部屋の片隅で、俊夫の顔が光って見えた気がした。
 歯が――白すぎるほどに光って、ぎらぎらしていた。

(行末に、沙織の筆圧で紙が破れかけている)