にくゑ-断片

■断片15|村の違和感
【日記より】
 移住から1週間。
 梓ちゃんの警告が気になって、周りをよく観察するようになった。

 今日、郵便受けに手紙が入っていた。
 宛名なし、差出人なし。
 中には一枚の紙。

「歓迎会のお知らせ 来月15日 村の集会所にて」

 でも変なの。
 文字が全部、同じ筆跡。
「歓迎会」も「村の集会所」も、まったく同じ字。
 まるで一人が全部書いたみたい。

 俊夫に見せたら「印刷じゃない?」って言うけれど、
 明らかに手書き。でも機械みたいに正確。

 梓ちゃんの言葉を思い出す。
「みんな同じなんです」

 それと、陽太のこと。
 昨日、庭で誰かと話してた。

「うん、わかった」
「今度一緒に遊ぼうね」
「お母さんには内緒だよ」

 でも相手の声が聞こえない。
 陽太一人で立ってるだけ。

「誰とお話ししてたの?」って聞いたら、
「お友達だよ。名前は内緒」って。

 3歳の子が「内緒」なんて言葉、普通使う?

 梓ちゃんが言ってた。
「子どもが一番危ない」って。

 夜になって気づいた。
 陽太の靴が泥だらけになってる。
 でも今日、陽太は家から出てない。
 ずっと庭にいただけなのに。

 その泥、変な匂いがする。
 生臭くて、甘くて。
 川の匂いじゃない。

 俊夫は「子どもは泥遊びが好きだから」って言うけれど。

 でも私は知ってる。
 あの泥の匂いを。
 
 お母さんのお葬式の時、墓地で嗅いだ匂いだ。

 梓ちゃんの警告、本当だったのかもしれない。

【日記の端に小さく】
 陽太のこと、もっと注意して見てないと
 何かが、息子を狙ってる……