深緑色の陶器の平たい皿で、
白い小さな花が緑の丸い葉に包まれぽっかりと水に浮かんでいる。

丸い月がキスを投げるように淡い金色の光を届ける夜だった。
まだ肌寒い初春、細く小さな滝の流れをくむ愛らしい川が夜の漆黒をキラキラと彩る。点在するオレンジ色のランプの光を借りて。
清い流れが光の粒になり目を楽しませる今宵、テラス席には僕たちしかいない。隠れ家のようなレストランでディナーをし、食後のカクテルと小さな庭園、春間近の澄んで初な空気と穏やかな時間をたのしんでいる。

木製の丸テーブルの上にきみのギムレットと僕のマティーニ。いつもより良く笑うきみのつややかなショートカットの黒髪にかかる光のティアラ。
なんて美しい夜。

レストランとはガラスドアを隔てて別世界だ。中は明るくあたたかそう、楽しそう。僕たちはふたりきりの世界にいる。中と外、おたがいが見えているが、
スクリーンの中よりも遠くて現実味がないのは、横にいるきみがあまりにも嬉しそうに笑うから。安楽椅子のようなえんじ色のソファーに沈みこんで。

きらめく川を流れる白い花の名前をおしえて。