私と永和様が新婚旅行から帰ってきてから2日後。
私は永和様と永和様の護衛である 蒼史様と鬼の国の王都で行われている初夏を祝う夏祭りへと来ていた。
「凄い賑わっていますね」
「ああ、そうだな」
私と永和様、そして護衛の蒼史様。
私達、三人は今、沢山の出店が両道に立ち並んでいる王都の道を歩いていた。
「美月、何か食べたい物はあるか?」
「食べたいものですか? そうですねぇ、あ、りんご飴食べたいです……!」
「りんご飴か、わかった、屋台を探そう」
私が食べたい物を言えば、永和様は優しく笑いかけて、歩きながら王都の両道に立ち並ぶ屋台を横目に見てりんご飴が売られている屋台を探し始める。
「陛下、あそこにりんご飴の屋台があります」
私と永和様の背後を少し距離を空けて歩いていた護衛の蒼史様が前方の左にりんご飴が売られている屋台があることを知らせてくれた。
「本当だな、ありがとう、蒼史」
永和様は歩きながら護衛の蒼史様の方に顔を向ける。
「いえいえ」
私も歩きながら蒼史様に顔を向けて軽く会釈して「ありがとうございます。蒼史様」とお礼を述べた。
私達がりんご飴が売られている屋台の前に着くと、りんご飴を売っている屋台の店主である年配の男が私の横にいる永和様を見て少し驚いた顔をする。
「え、永和陛下ですか?」
「あ、ああ、どうしてわかった?」
りんご飴の屋台の店主の男が変装している永和様がこの鬼の国の王であることを見抜いた為、永和様は少し困惑していた。
店主の男はそんな永和様を見て笑い返す。
「はは、いやぁ、変装してはいますが、陛下の綺麗な青い瞳の色や立ち振る舞い、身に付けている衣服で何となくわかりました」
「なるほど……」
「はい、まあ、私は普段から人と関わる商売をしているもんで、職業柄、人を見抜くことには長けておりますから」
「そうか、あ、りんご飴を一つくれ」
永和様の言葉に店主の男は「わかりました!」と返して、屋台の机の上に立て掛けられるように並べられているりんご飴を一つとり、永和様に差し出す。
「美月、りんご飴だ」
永和様は店主の男から受け取ったりんご飴を私に手渡してから、店主の男に銭を支払う。
「ありがとうございました! 陛下、奥様とこれからも末永く幸せに」
「ああ、」
りんご飴の店主に見送られて、私と永和様。
そして護衛の蒼史様はりんご飴が売られている屋台に背を向けて歩き出した。
「美味しいか?」
歩きながらりんご飴を頬張る私を横目に見ながら永和様は声を掛けてくる。
「はい! とっても美味しいです。ありがとうございます、永和様」
「そうか、それならよかった」
永和様は私を見つめて優しく笑った。
私はそんな永和様を見て心の中で幸せだなと思いながら繋いでいる永和様の手を優しく握り返した。


