皇太子の座間亜(ざまあ)は悩んでいた。スペックは高いのだが、今は亡き母親の出自の点で、他の兄弟たちに劣っていたのだ。それ以外の面では何の問題もないわけで、父である現在の王から次の王になる指名を受けたのだが……父王に万が一のことが起きた場合、別の兄弟を皇太子にしようとする勢力が現れないとも限らない。
 それに対抗する手段を、座間亜は思い付いた。有力な外国の王家と縁組をしたら良いのだ!
 花嫁の候補者として名前が挙がった中で、座間亜が最も気に入ったのは、サマーという名の娘だった。
 サマーは王女だが、妹や義母に虐げられているうえに、親友だと思っていた人間にまで陰で意地悪されるという哀れな境遇で、自分の宮廷に居場所がなかった。座間亜から求婚された彼女は、すぐに嫁いで来て、電撃的に妊娠した。
 これに苛立ったのが妹や義母そして親友である。
 妹や義母は流産させようと毒入りの食べ物を送って来たり刺客を放ったりしたが、いずれも座間亜に阻止された。彼は、これらの悪事の証拠をサマーの父に送ったので、犯人の妹や義母は死罪となった。
 サマーの親友は、呼ばれもしないのに座間亜の後宮に入り込み、自分も懐妊したと偽装妊娠をでっち上げた。だが、座間亜と関係を持っていないことが明らかだったので、これまた嘘つきとして処刑された。
 やがてサマーは出産した。二つの王家の血を引く王子の誕生である。その王子は、やがて二つの王国を収める国王の座に就いた。サマーは二つの王国の国王を生んだ国母として尊敬を集めたとさ、めでたしめでたし。