季節は巡り、桜の花びらが風に舞う中、海翔は一人で病院の前に立っていた。
澪の笑顔、交わした約束、すべてが胸に残っている。
涙は枯れたわけではないけれど、海翔の心は少しずつ温かさで満たされていた。
「澪、君が残してくれた季節を、ずっと大事にするよ」
海翔はそっとつぶやき、目を閉じる。
思い出の光景が、まるで昨日のことのように蘇る。
二人で過ごした日々、交わした言葉、笑い合った時間――
それらすべてが、海翔の人生を輝かせる宝物だった。
やがて海翔は前を向き、ゆっくり歩き出す。
悲しみはまだ消えないけれど、澪が残してくれた季節は、これからの自分を支えてくれると信じて。
海翔の胸には、確かな温もりが残っていた。
それは、澪がくれた最も大切な贈り物――永遠に色褪せない季節だった。