入院生活が続く澪のもとに、海翔は毎日欠かさず通った。
教科書を持ってきたり、図書館で借りた本を読んだり。
どんなに短い時間でも、二人で過ごす瞬間は特別だった。
「海翔、今日も来てくれたんだね」
澪の声に、海翔は少しだけ照れくさくなる。
「もちろん。毎日来るよ」
二人で本を読み、笑い合い、時には真剣に将来のことを話す。
小さな冗談や、何気ない会話も、今の二人には大切な宝物だった。
窓の外の景色が季節を告げ、桜の花びらが舞う。
「この季節を、君と一緒に見られてよかった」
海翔がそう言うと、澪はそっと笑った。
「私も、海翔と過ごせて幸せだよ」
限られた日々でも、二人の心は確かに寄り添っていた。
この瞬間、この季節――それだけで、二人の世界は満たされていた。