図書館で過ごす日々が続く中、海翔は澪と少しずつ打ち解けていた。
本を交換したり、学校の話をしたり、笑顔を見せ合う時間は、二人にとって特別なものになっていた。
ある日、澪がぽつりとつぶやく。
「もし、来年の花火大会に行けたら…一緒に見たいな」
海翔は胸が熱くなる。
それは普通の恋人の約束のようで、でも澪には病気がある。
「行こうね」と自然に答える自分の言葉に、心の奥で少しの不安が芽生える。
それでも、笑顔の澪を見ると、迷う理由はどこにもなかった。
二人で交わしたその小さな約束が、これから続く季節の、かけがえのない思い出になる――。