海翔は、学校帰りにふと立ち寄った小さな図書館で、澪と出会った。
窓際の席で、澪は本を開いたまま微かに咳き込んでいた。
「大丈夫ですか?」
海翔が声をかけると、澪は少し驚いたように顔を上げ、優しく微笑んだ。
「ありがとう、大丈夫…ただの風邪みたいなものだから」
海翔はその笑顔に胸がきゅっとなるのを感じた。
普通の女の子、でもどこか儚げで、守りたくなるような雰囲気があった。
それからというもの、海翔は毎日図書館に足を運ぶ理由ができた。
澪と話すために。笑うために。
でも、まだ気づいていなかった――
この出会いが、海翔の人生で最も大切な季節になることを。