降り注ぐ、たくさんの音。
 ピンポン球の音。

 まるでそれぞれが個別の音を奏で、一つの音楽を形づくるように。
 嫌いなはずだった、聞きたくなかったそれ。だけど今は少し違う。
 今は。
 隣に、彼女がいる。みんながいる。

『――――』

 アナウンスがアリーナ内に響き、私たちはコート前に立つ。対戦相手と、向かい合う。

 何かが大きく変わったわけじゃない。大きな変化は、突然には訪れない。
 手は震える。口は渇く。

 押し寄せる不安。勝てるかどうか。練習の成果を、出せるかどうか。隣の彼女に、みんなに、幻滅されないか。

 それでも。
 ざわつく鼓動の中に、確かにあるのを私は感じる。
 それは、高揚感。
 それは、闘志。
 それは、自信。

 彼女となら、みんなとなら。きっとできる。そんな思い。

「ラブオール」

 審判が試合開始を告げる。相手が構える。応援してくれる人たちが見守る。期待と不安と、あらゆる思いが、入り混じる。

「優月」
「うん」

 私は並び立つパートナーと視線を合わせ、うなずく。
 構えて、手を開いて。真っ白な球を高く、投げ上げる。

 そうして。
 私たちの試合が、始まる。