屋上で作戦の案を聞かされた時は「本当に大丈夫かこの作戦」と思っていたけど、母さんが上手いこと勘違いをしてくれたせいで疑われずに済んだ。

 花音が作ってくれたプロっぽいプリントも助けになったんだろう。さすがというか、そういうところは器用だよな、あいつも。

 あとは上手いことアリバイ作りだ。

 この作戦は美織さんに会った後ではいくらバレても構わないが、夜の校舎を訪れる前にバレてしまうと色々とマズいことになる。

 だから花音には親に「友だちの家にお泊りをしてくる」と言わせて、その友だちには口裏を合わせてもらうよう工作をしている。お陰で原宿のクレープをおごることになったけど、これからやろうとしていることと比較すれば安い投資だ。ホリエモンならそう言うに違いない。

 明日になる前には肝試しの話題が他の親に漏れないようにしておかないと。余計なことを喋られたらすべてがパーになる。

 美織さんのためとはいえ、なかなか悪知恵を使わないといけないな。まあいいだろ。本当に悪いことをするわけじゃないから。

 ……おう、サノ、来たか。こっちにおいで。

 なんか、自分が初代サノだったって思うと変な感じだよな。「ニャー」って、返事してるのか、お前。感心なニャンコだな。

 いいか、二代目。お前は絶対に長生きしろよ。どこにも逃げるなよ。たとえ自分の寿命うが尽きることが分かってもだ。

 俺はずっとお前の傍にいる。

 オヤジがそうしてくれたように、最後まで面倒を見切るからな。だから長生きしてくれよ、お願いだから。