剣心君の彼女(?)があたしを見て気を失った。このコが剣心君の言っていた花音ちゃんかな?
それはそうとして、その花音ちゃんはあたしが宙に浮いていることに気付くと気を失った。
「おい、花音。大丈夫か!?」
剣心君は彼女の体を支えながら声を掛ける。まあ、幽霊に会ったらそんなリアクションになるよね。剣心君と毎晩会って感覚が麻痺していたけど。
「剣心君、ちゃんとあたしのことは説明したの?」
「いや、会ってほしい人としか言っていない」
「あー。それだとビックリするだろうね」
でも、あたしが幽霊であることを話しても剣心君が変な人扱いされただろうし、説明が難しいよね。というか、このコを連れてきたこと自体が間違いだったんじゃないの? って思わなくもなかったけど、それは言わないことにした。
失神した女の子は目こそ開いているんだけど、どこか遠くを見てブツブツ何か呟いていた。失神というよりは極度の現実逃避なのかな。
「人が、浮いてる。ふふふ、ははは。不思議な夢だよね。そうだよね、これはきっと夢なんだよね」
棒読みの読経みたいな言葉が倒れた女の子から漏れる。うーん、これ、気絶?
「剣心君、キスしたら起きるんじゃない?」
「ちょっと! キスなんてそんな!」
気を失っていた女の子がガバっと起きる。あたしの一言で、どこかへと飛んでいった意識が一瞬で戻った。
なんとなしに、この子は剣心君が好きなんだろうなと分かった。そうでないと夜の校舎にまで一緒に来ないよね。
「良かった。花音、おちつけ。そこにいるのは悪い人じゃない」
「そうそう、あたしは悪い人じゃないよ。人間ではないけど」
「キャ……!」
絶叫しかけた花音ちゃんの口を剣心君が塞ぐ。
「大丈夫だ、落ち着け。俺が付いているから」
声を殺しながら剣心君が花音ちゃんの耳元で囁く。口に手を当てられた花音ちゃんは涙目になりながら頷いている。
「落ち着いた、かな?」
あたしが訊くと、花音ちゃんが息を切らせながら下を向いていた。幽霊相手にどんなリアクションをすればいいのか分からないんだと思う。
「この人が俺の助けたい人だ」
「加藤美織です。よろしく」
剣心君のアシストを受けて、あらためて自己紹介する。
「人じゃ……ないじゃん」
息を切らせながら、花音ちゃんが言った。たしかに、あたしは幽霊だから人ではないよね。
「自分で言うのもなんだけどさ、あたしは善人だし悪霊じゃないからさ。そこは信じてもらえるかな?」
あたしがそう言うと、花音ちゃんは微妙な顔であたしを見てから小さく「うん」と返した。なんだか臆病な小動物でも相手にしているみたい。
あたしは自分が亡くなったこと以外、簡単に自己紹介した。この校舎にずっと住んでいること、剣心君と出会ったこと、そして彼と夜な夜な会って話していることも。
花音ちゃんも最初こそ拒否反応のすごい顔をしていたけど、時間が経つにつれてあたしの存在を受け入れているように見えた。やっぱり剣心君の彼女なのか、素直でいいコだった。
少し前まではパニックだったけど、なんとか落ち着いてくれた。あたしに対する現実性も得られたみたいなので、もう本題を話しても大丈夫かもしれない。
そんなことを思っていると、花音ちゃんが口を開く。
「話は分かったわ。それで、どうして美織さんはここにいるの?」
あたしがチラっと視線をやると、剣心君が無言で頷いた。もう話しても大丈夫――彼の目はそう言っていた。
「実はね、あたしはこの学校の生徒だったの」
覚悟を決めたあたしは、命懸け(?)のプレゼンテーションを始めた。
それはそうとして、その花音ちゃんはあたしが宙に浮いていることに気付くと気を失った。
「おい、花音。大丈夫か!?」
剣心君は彼女の体を支えながら声を掛ける。まあ、幽霊に会ったらそんなリアクションになるよね。剣心君と毎晩会って感覚が麻痺していたけど。
「剣心君、ちゃんとあたしのことは説明したの?」
「いや、会ってほしい人としか言っていない」
「あー。それだとビックリするだろうね」
でも、あたしが幽霊であることを話しても剣心君が変な人扱いされただろうし、説明が難しいよね。というか、このコを連れてきたこと自体が間違いだったんじゃないの? って思わなくもなかったけど、それは言わないことにした。
失神した女の子は目こそ開いているんだけど、どこか遠くを見てブツブツ何か呟いていた。失神というよりは極度の現実逃避なのかな。
「人が、浮いてる。ふふふ、ははは。不思議な夢だよね。そうだよね、これはきっと夢なんだよね」
棒読みの読経みたいな言葉が倒れた女の子から漏れる。うーん、これ、気絶?
「剣心君、キスしたら起きるんじゃない?」
「ちょっと! キスなんてそんな!」
気を失っていた女の子がガバっと起きる。あたしの一言で、どこかへと飛んでいった意識が一瞬で戻った。
なんとなしに、この子は剣心君が好きなんだろうなと分かった。そうでないと夜の校舎にまで一緒に来ないよね。
「良かった。花音、おちつけ。そこにいるのは悪い人じゃない」
「そうそう、あたしは悪い人じゃないよ。人間ではないけど」
「キャ……!」
絶叫しかけた花音ちゃんの口を剣心君が塞ぐ。
「大丈夫だ、落ち着け。俺が付いているから」
声を殺しながら剣心君が花音ちゃんの耳元で囁く。口に手を当てられた花音ちゃんは涙目になりながら頷いている。
「落ち着いた、かな?」
あたしが訊くと、花音ちゃんが息を切らせながら下を向いていた。幽霊相手にどんなリアクションをすればいいのか分からないんだと思う。
「この人が俺の助けたい人だ」
「加藤美織です。よろしく」
剣心君のアシストを受けて、あらためて自己紹介する。
「人じゃ……ないじゃん」
息を切らせながら、花音ちゃんが言った。たしかに、あたしは幽霊だから人ではないよね。
「自分で言うのもなんだけどさ、あたしは善人だし悪霊じゃないからさ。そこは信じてもらえるかな?」
あたしがそう言うと、花音ちゃんは微妙な顔であたしを見てから小さく「うん」と返した。なんだか臆病な小動物でも相手にしているみたい。
あたしは自分が亡くなったこと以外、簡単に自己紹介した。この校舎にずっと住んでいること、剣心君と出会ったこと、そして彼と夜な夜な会って話していることも。
花音ちゃんも最初こそ拒否反応のすごい顔をしていたけど、時間が経つにつれてあたしの存在を受け入れているように見えた。やっぱり剣心君の彼女なのか、素直でいいコだった。
少し前まではパニックだったけど、なんとか落ち着いてくれた。あたしに対する現実性も得られたみたいなので、もう本題を話しても大丈夫かもしれない。
そんなことを思っていると、花音ちゃんが口を開く。
「話は分かったわ。それで、どうして美織さんはここにいるの?」
あたしがチラっと視線をやると、剣心君が無言で頷いた。もう話しても大丈夫――彼の目はそう言っていた。
「実はね、あたしはこの学校の生徒だったの」
覚悟を決めたあたしは、命懸け(?)のプレゼンテーションを始めた。



