あーあ、またやっちゃった。

 本当は剣心君のこと、心配で仕方がないのに。それなのに、彼を気遣う言葉がどうしても攻撃的になってしまう。

 クラスでは夫婦喧嘩なんて言われたりするけど、明らかにわたしが一方的に攻撃してるだけだし。なんかゴメンって感じ。

 どうすればいいんだろうって思ってママに相談したら、名前も出していないのに「剣心君、好きなんでしょう?」って返された。いや、そこじゃないし。それに、別に決めつけなくたっていいじゃん。まあ、相談したのは剣心君のことで間違いないんだけどさ。

 いつからか、他の男子にからかわれて剣心君って呼び方を井村君に変えていた。恋人って思われたくなかったから。でも、だからって他人って思われるもイヤ。

 剣心君、心ここにあらずって感じでボーっとどこかを見ていたな。

 ……まさか好きな人でも出来たの?

 いや、まさか。そんなことがあるはずない。このわたしを差し置いて、彼が他の女を好きになるなんてありえない。でも、好きになってたらどうしよう。そんなの、イヤだな。

 よくよく考えたらウチのクラスってかわいいコがいっぱいいるじゃん。花梨ちゃんとか、乃亜ちゃんとか、そのままアイドルに放り込んでもなんとかなりそうだし。別に剣心君のことは好きじゃないけど、後から来た人にとられるのは納得がいかないっていうか……ああ、もう何言ってんだろう、わたしは。

 もし井村君に好きな人が出来たとして、その人ってわたしよりも優しいのかな。そりゃこんなに攻撃的な女より、優しい人の方がいいって思うよね。うう……わたし、バカみたい。

 いやいや、井村君のことなんてどうでもいいし。わたしにはもっとカッコいい王子様が現れて、映画のヒロインさながらに幸せになるんだから。

 うん、そうだ。きっとわたしは、問題児の井村君が心配で仕方がないだけなんだ。そうに違いない。だからわたしは、井村君が道を踏み外さないように見守っていよう。そうだ、それなら彼のことをじっと見ていても大丈夫。みんな納得出来る。

 まったく、わたしを悶々とさせるなんて。

 また顔でも合わせたら、文句の一つでも言ってやろう。