何を勘違いしたのかは知らないが、花音は勝手に感動して味方になった。これは強力な追い風だ。

 どんな風の吹き回しかは知らないけど、こういうラッキーはすぐに活かさないといけない。花音の感動が冷めやらぬ内に二度目の打ち合わせをすると、両親へ「女子の友だちと一緒に出掛ける」と嘘をついてもらい、夜の学校で落ち合うこととなった。

 しかし、その時に俺の言ったことを振り返ると色々とおかしい。

「その人は事情が合って夜の学校でしか会うことが出来ない。このことは親にも友だちにも秘密だ」

 ……実際には何一つ嘘は言っていないのだが、冷静に聞いていればツッコミどころしかない説明だ。

 自分で振り返っても怪しさ満点の発言だが、名前も知らない先輩に同情しまくっている花音は心がザコザコ状態になっているせいか、「わたしは絶対に秘密を守る」という顔で俺の打診を快諾した。将来悪い男に騙されるんじゃないかとちょっと心配になった。落ち着いたら似たような手口の国際ロマンス詐欺があることを教えてあげよう。

 軽口はともかくとして、美織さんの方にも助っ人を呼んで来る旨の報告をしておかないと。彼女も何でも知っているわけではないからな。いきなり花音を連れて行ってビックリされても困る。

 あとはうまいことLINEで指示を出していこう。大丈夫だ、きっと上手くいく。後は焦らず、やるべきことを一つずつこなしていくだけだ。