あちこち探し回ったけど、結局誰も見つからなかった。

 考えてみたら、正和君もあの学校とかいう場所に毎日行っているらしいから、他の家族もぼくが寝ている間に出かけただけなんじゃないか。

 あーあ、なんか心配して損したな。

 まあいいや。近場を探検できて楽しかったし。他の猫にも会えたらいいのにな。今度は友だちでも探してみようか。

 学校の前を通る。思えば、ここでダンボールに入れて捨てられたんだよな。

 あの最低な元飼い主、今頃どうしているんだろう。

 黒猫は不吉みたいなことを言ってたけど、ぼくから言わせればお前の方がよっぽど不吉な存在だよ。

 さて、帰ったら正和君にまた撫でてもらおう。この道路を渡って、と。

「サノ!」

 ――ん? 誰か呼んだ?

 あ、美織ちゃんだ。どうしたの? そんな泣いた顔をして。

 直後に、眩しい光が全身を照らす。

 え? なに? 何が起こったの?

 気付けば、目の前に大きな車が迫っていた。