今日はとうとう正和君に告白……のはずが、それどころじゃなくなった。
あたしがああでもないこうでもないとやっている内に大事件が起こった。
――猫のサノが、正和君の家から逃げ出した。
はじめに気付いたのは、正和君のお母さんだった。買い物から帰って来た彼女は、サノにごはんをあげようとしていた。
だけど、いくら呼べどもサノが来ない。いつもなら飛んで来るはずなのに。不審に思った正和君のお母さんは家中を探し回った。
すると正和君の部屋にある窓をこじ開けて、外へと出て行った形跡があった。正和君本人が帰って来るとその旨が伝えられ、あたしも含めた何人かのクラスメイトたちが一生懸命サノを探しているという状況だ。
この辺りは危険だ。車がビュンビュン通るので、時々不運な野良猫が轢かれて死んでいることもある。サノと出会ってから、そんな風に亡くなった猫を見つけると胸が張り裂けそうだった。
サノがそんな風になったら……ダメ、そんなの、考えたくもない。
正和君から電話が来た時は心臓が跳ねたけど、告白ムードは完全に消し飛んだ。その後にすぐ菜々ちゃんにも電話して、手分けしてサノを探すことにした。
あたしは近所の公園を中心に探すことにした。
急がないといけない。すでに下校時間も終わって、夕方から夜になりかけている。暗くなれば黒猫のサノは余計に探しにくくなる。
どこにいっちゃったの、サノ? 何か嫌なことでもあったの?
近所の公園を探し回り、途中で出会った知り合いには「黒い猫を見ませんでしたか?」と訊いて回った。誰か見ていてもおかしくないはずなんだけど、それでもめぼしい情報は得られなかった。
年よりの猫なら死に際に誰もいない所へ去っていくという話は聞いたことがあるけど、サノはまだまだ若い猫だ。そうなると好奇心でも湧いて近場を探検してみようと思い至っただけなのかもしれない。でもさ、その好奇心が猫を殺すことだってあるんだよ。サノは知らないだろうけど。
「サノー! どこー?」
声を出しながらサノを探す。辺りはすっかり暗くなっていく。一向にサノの手がかりが見つからず、悲しくなって涙が出てきた。
サノを拾った日のことを思い出す。
ダンボールに入って、ニャアニャアとか細い声で鳴いていた子猫。
絶対に助けるって決めたのに。絶対に幸せにするって決めたのに。
サノがいなくなってしまうのかと思うと、涙がポロポロと流れてきた。陽が落ちたお陰で、泣いているところは見られないで済んだ。
どうしよう。思いつくところは全部探したのに、どこにもサノはいなかった。うぅ、どこに行っちゃったんだよ、サノ。
結局どこを探してもサノは見つからず、学校の前をトボトボと歩いて帰ることにした。
歩きながら、自分を叱咤する。もしかしたら正和君が見つけているかもしれないし、菜々ちゃんが見つけている線だってある。それでも見つからなければ、明日だってあさってだって探すしかない。
あたしは絶対に諦めないよ。だからサノ、それまで無事で待っていてね。
そう思った刹那、真っ暗な道路に小さな影が見えた。
「あ」
遠くからでも分かった。あれは、間違いなくサノの姿だ。
「サノ!」
あたしはサノを呼びながら駆けていく。サノはあたしの声に気付いたのか、こちらを振り返って歩いて来る。
――その時、すぐ横からトラックが走って来た。
あたしがああでもないこうでもないとやっている内に大事件が起こった。
――猫のサノが、正和君の家から逃げ出した。
はじめに気付いたのは、正和君のお母さんだった。買い物から帰って来た彼女は、サノにごはんをあげようとしていた。
だけど、いくら呼べどもサノが来ない。いつもなら飛んで来るはずなのに。不審に思った正和君のお母さんは家中を探し回った。
すると正和君の部屋にある窓をこじ開けて、外へと出て行った形跡があった。正和君本人が帰って来るとその旨が伝えられ、あたしも含めた何人かのクラスメイトたちが一生懸命サノを探しているという状況だ。
この辺りは危険だ。車がビュンビュン通るので、時々不運な野良猫が轢かれて死んでいることもある。サノと出会ってから、そんな風に亡くなった猫を見つけると胸が張り裂けそうだった。
サノがそんな風になったら……ダメ、そんなの、考えたくもない。
正和君から電話が来た時は心臓が跳ねたけど、告白ムードは完全に消し飛んだ。その後にすぐ菜々ちゃんにも電話して、手分けしてサノを探すことにした。
あたしは近所の公園を中心に探すことにした。
急がないといけない。すでに下校時間も終わって、夕方から夜になりかけている。暗くなれば黒猫のサノは余計に探しにくくなる。
どこにいっちゃったの、サノ? 何か嫌なことでもあったの?
近所の公園を探し回り、途中で出会った知り合いには「黒い猫を見ませんでしたか?」と訊いて回った。誰か見ていてもおかしくないはずなんだけど、それでもめぼしい情報は得られなかった。
年よりの猫なら死に際に誰もいない所へ去っていくという話は聞いたことがあるけど、サノはまだまだ若い猫だ。そうなると好奇心でも湧いて近場を探検してみようと思い至っただけなのかもしれない。でもさ、その好奇心が猫を殺すことだってあるんだよ。サノは知らないだろうけど。
「サノー! どこー?」
声を出しながらサノを探す。辺りはすっかり暗くなっていく。一向にサノの手がかりが見つからず、悲しくなって涙が出てきた。
サノを拾った日のことを思い出す。
ダンボールに入って、ニャアニャアとか細い声で鳴いていた子猫。
絶対に助けるって決めたのに。絶対に幸せにするって決めたのに。
サノがいなくなってしまうのかと思うと、涙がポロポロと流れてきた。陽が落ちたお陰で、泣いているところは見られないで済んだ。
どうしよう。思いつくところは全部探したのに、どこにもサノはいなかった。うぅ、どこに行っちゃったんだよ、サノ。
結局どこを探してもサノは見つからず、学校の前をトボトボと歩いて帰ることにした。
歩きながら、自分を叱咤する。もしかしたら正和君が見つけているかもしれないし、菜々ちゃんが見つけている線だってある。それでも見つからなければ、明日だってあさってだって探すしかない。
あたしは絶対に諦めないよ。だからサノ、それまで無事で待っていてね。
そう思った刹那、真っ暗な道路に小さな影が見えた。
「あ」
遠くからでも分かった。あれは、間違いなくサノの姿だ。
「サノ!」
あたしはサノを呼びながら駆けていく。サノはあたしの声に気付いたのか、こちらを振り返って歩いて来る。
――その時、すぐ横からトラックが走って来た。



