眠る前、あたしはずっと菜々ちゃんの言葉を反芻していた。

 ――美織ちゃんも、井村君のことが好きなんでしょ?

 その通り。一生懸命隠し続けてきたけど、菜々ちゃんには何もかもお見通しだったみたい。

 それでも、正和君や菜々ちゃんと一緒にいる時間が楽し過ぎて、それを終わらせたくなかった。

 あたしが告白すれば正和君は首を縦に振ってくれるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。どちらにしても、三人で上手く取っていたバランスは崩れることになる。

 出来ればそれは避けたいことだった。それでも、菜々ちゃんが正和君のことを好きになっちゃったし、あたし自身も彼のことが好きになってしまった。仕方のないことだけど、どちらにしてもいつでも一緒にいる三人という関係は終わりを告げることになる。

 それが嫌で、自分の気持ちに嘘をつき続けてきたけど、菜々ちゃんにすっかり見透かされていた。あたしが守りたかったのは、彼女の笑顔でもあったのにね。

 正和君があたしのことをどう思っているかは知らない。正直あたしの方が彼を好きでいることに忙し過ぎて、正和君自身がどんな思いなのかなんて考えたこともなかった。

 そうだよね。逃げちゃいけないよね。

 菜々ちゃんを励ましていたくせに、あたし自身が自分から逃げ続けていた。だけど、それももう終わり。

 ――あたしは、もう逃げない。

 フラれようが、どうなろうが、正和君にあたしのスキを全力でぶつけてみせる。

 それで何が起こるかは分からない。もしかしたら最悪の結末が待っているかもしれない。それでも……それでも、このまま胸に秘めた想いを押し殺して生きていくのは嫌だ。

 だから、伝えよう。君が、本当に好きなんだって。

 すごく勇気のいることだけど、ここで覚悟を決めないと。

 菜々ちゃんは勇気を出して一歩を踏み出した。あたしがそうしないでどうするんだ。

 明日にも、正和君に告白しよう。

 それでどうなるか気を揉むことはもうしない。

 結果がどうあれ、前に進むんだ。