ああ、もう恥ずかしい。美織ちゃんにちょっと相談するだけのつもりだったのに、盛大に泣いてしまった。

 それなのに美織ちゃんてば私のことを気遣ってくれて、何て言うか、天使みたいな見た目をしたコっていうのは器も違うんだなって痛感させられる。

 とりあえず良かったこととしては、美織ちゃんは現時点で井村君を恋愛対象としては見ていないってこと。あくまで自己申告の話にはなるけど。

 もし美織ちゃんと正面から闘ったら絶対に勝てないよね。それこそ、安倍なつみと好きな人を奪い合うぐらいの感じになっていたはず。そんな戦い、私に勝てるはずがない。

 しかも、美織ちゃんは私の恋を応援してくれるそうだった。

 私の手を握って、「あたしに任せて。二人をくっつける作戦、考えよう!」とまで言ってくれた。どれだけ心の綺麗な女子なんだと思う。

 でも、何をすればいいんだろうね。

 井村君はやっぱり真面目っていうか、色仕掛けみたいなのは効かなそうだし。いや、効いたとしてもそんなの出来ないけど。

 そうなると美織ちゃん頼みになるのかな。ああ、なんかそれも嫌だな。自分で打開策を考えたいところだけど、好きな人に好きって伝えるのって泣きそうになるぐらい勇気が必要にならない?

 だって、自分の心の内に隠していた想いを、すべて相手にさらけ出すんだよ? そんなに怖いことを何人もの人がやっているの? 信じられない。

 テレビで泣きながら告白していた小学生の気持ち、すごく分かるなあ。あれは見ていた私も釣られて泣いて、お母さんにからかわれたっけ。

 もしかしたら他の人に私の好きな人なんてバレバレなのかもしれないけど、それでも自分の想いを相手に伝えるのは怖いよ。だって、その想いは拒絶される時だってあるんだからね。

 とにかく、美織ちゃんにはカッコ悪いところを見せてしまったので、何もしないまま終わらせたくない。

 ようし、私はちゃんと井村君に好きだって伝えるぞ。

 それでフラれたらもう仕方がない。彼の性格からして、もう友だちに戻れないなんてことも絶対に無いはず。

 でも、それでも万が一のことを考えると怖くなる。

 私が告白したことで、歯車が少しずつかみ合わずに何もかもがダメになる可能性だってある。そんなことは無いって否定したいけど、あり得ないことなんてあり得ないんだよね。

 ああ、どうして私は美織ちゃんみたいな顔で生まれてこなかったのかな。

 あんな美少女に生まれれば、何一つ悩み事も無く生きていけたはずなのに。