美織ちゃんはね、今から振り返っても本当にいいコだった。
見た目があんなにかわいいのに、誰にでも分け隔てなく接してくれて、悩みがあれば真剣に聞いてくれた。
多分だけど、クラスの男子は大半が美織ちゃんのことが好きだったんじゃないかな。それぐらい愛されているコだった。
私は彼女と仲が良くてね。お父さんもそうだったんだけど、三人でよく一緒に帰ったりしていた。
ある日ね、美織ちゃんが学校の前に捨てられている猫を拾った。それが、初代のサノよ。
サノを拾ったはいいけど、彼女の家では猫が飼えなかった。どうしようってなっている時にお父さんが来たんだよね。それで、俺が何とかするとか言って持って帰って、おじいちゃんを説き伏せて猫を飼う許可を取ったの。
私も猫が好きだったから、美織ちゃんと一緒によくお父さんの実家まで行った。珍しく人好きな猫でね。捨てられたなんていう悲壮感はどこにもなくて、愛情をたくさん受け継いだ猫って感じが全身から溢れていた。
三人でよく集まって、楽しくやってたんだけどね……。
お父さんの実家から、サノが逃げてしまったのよね。それでみんなでサノを助けることになって、あっちこっちを探し回った。
結論から言うとね、結局サノは生きていたのよ。
何にもなかったみたいにお父さんの部屋で帰りを待っていたみたい。まったく、はた迷惑な話よね。正和君……お父さんから連絡が来て、私も一安心した。
だけど、悲劇は私たちの知らない間に起きていた。
夜中になってね、美織ちゃんのご両親から電話が来たの。何度か話したことがあったから、結構仲が良かったんだけど、その時は本当に取り乱していてね。
電話でずっと「美織が、美織が」って言っていて、何があったんだろうって思った。だけど、その口調から美織ちゃんの身に何かが起こったことだけは分かった。
嫌な予感は当たっていて、美織ちゃんが事故で亡くなったことを聞いたわ。私も当時は何が起こっているのか分からなくて……ごめんなさい。昔を思い出したら、トラウマが戻って来たみたい。
とにかく、簡単に説明すると美織ちゃんは交通事故で亡くなったの。あんなに愛されていたのに、あんなに元気だったのに、そんな彼女がいきなりいなくなるなんて信じられなかった。
当時はね、街に監視カメラなんて置いてある時代じゃなかった。だから事故の目撃者もいなくて、トラックの運転手の発した証言だけが唯一の手掛かりだったみたい。
理由はどうあれ、私たちは美織ちゃんがいなくなったことを受け入れることが出来なかった。だって、そうでしょう?
彼女は私たちと卒業して、誰よりも素敵な人生を送って、誰よりも幸せに生きていく権利があるはずだった。それが、たったの一瞬ですべて失われてしまったのだから。
冗談とか抜きにしてね、本当にドラゴンボールか何かで生き返らせることが出来ないかなって思ったわね。そんな非現実的な解決策を考えるぐらい、私たちは本気で傷付いていた。
どうしてあの道路で美織ちゃんが事故に遭ったのかも分からない。見通しがいいはずの場所なのに、どうして……。そんな想いで、いつもあの場所を通っていた。
最近だとタイムリープって言うの? あの時間を巻き戻すタイプの物語。そういう話を書く人の気持ちが分からないでもないのよね。
だって、どうしたってやり直したいことの一つや二つぐらい、人生にはあるものじゃない。
もし、美織ちゃんを助けられるなら……私は悪魔に魂を売ってでも、それをやり遂げようとするかもしれない。
だから、もしタイムリープが出来たとしたら、あの日の前に戻りたいかな。それで、美織ちゃんを部屋に監禁して、絶対に出さないようにするの。
バカみたいだけど、そうしたら彼女は死なないじゃない?
そんなことも考えたくなるぐらい、彼女の喪失は私にとって大きかったの。……きっと、お父さんにとってもね。
見た目があんなにかわいいのに、誰にでも分け隔てなく接してくれて、悩みがあれば真剣に聞いてくれた。
多分だけど、クラスの男子は大半が美織ちゃんのことが好きだったんじゃないかな。それぐらい愛されているコだった。
私は彼女と仲が良くてね。お父さんもそうだったんだけど、三人でよく一緒に帰ったりしていた。
ある日ね、美織ちゃんが学校の前に捨てられている猫を拾った。それが、初代のサノよ。
サノを拾ったはいいけど、彼女の家では猫が飼えなかった。どうしようってなっている時にお父さんが来たんだよね。それで、俺が何とかするとか言って持って帰って、おじいちゃんを説き伏せて猫を飼う許可を取ったの。
私も猫が好きだったから、美織ちゃんと一緒によくお父さんの実家まで行った。珍しく人好きな猫でね。捨てられたなんていう悲壮感はどこにもなくて、愛情をたくさん受け継いだ猫って感じが全身から溢れていた。
三人でよく集まって、楽しくやってたんだけどね……。
お父さんの実家から、サノが逃げてしまったのよね。それでみんなでサノを助けることになって、あっちこっちを探し回った。
結論から言うとね、結局サノは生きていたのよ。
何にもなかったみたいにお父さんの部屋で帰りを待っていたみたい。まったく、はた迷惑な話よね。正和君……お父さんから連絡が来て、私も一安心した。
だけど、悲劇は私たちの知らない間に起きていた。
夜中になってね、美織ちゃんのご両親から電話が来たの。何度か話したことがあったから、結構仲が良かったんだけど、その時は本当に取り乱していてね。
電話でずっと「美織が、美織が」って言っていて、何があったんだろうって思った。だけど、その口調から美織ちゃんの身に何かが起こったことだけは分かった。
嫌な予感は当たっていて、美織ちゃんが事故で亡くなったことを聞いたわ。私も当時は何が起こっているのか分からなくて……ごめんなさい。昔を思い出したら、トラウマが戻って来たみたい。
とにかく、簡単に説明すると美織ちゃんは交通事故で亡くなったの。あんなに愛されていたのに、あんなに元気だったのに、そんな彼女がいきなりいなくなるなんて信じられなかった。
当時はね、街に監視カメラなんて置いてある時代じゃなかった。だから事故の目撃者もいなくて、トラックの運転手の発した証言だけが唯一の手掛かりだったみたい。
理由はどうあれ、私たちは美織ちゃんがいなくなったことを受け入れることが出来なかった。だって、そうでしょう?
彼女は私たちと卒業して、誰よりも素敵な人生を送って、誰よりも幸せに生きていく権利があるはずだった。それが、たったの一瞬ですべて失われてしまったのだから。
冗談とか抜きにしてね、本当にドラゴンボールか何かで生き返らせることが出来ないかなって思ったわね。そんな非現実的な解決策を考えるぐらい、私たちは本気で傷付いていた。
どうしてあの道路で美織ちゃんが事故に遭ったのかも分からない。見通しがいいはずの場所なのに、どうして……。そんな想いで、いつもあの場所を通っていた。
最近だとタイムリープって言うの? あの時間を巻き戻すタイプの物語。そういう話を書く人の気持ちが分からないでもないのよね。
だって、どうしたってやり直したいことの一つや二つぐらい、人生にはあるものじゃない。
もし、美織ちゃんを助けられるなら……私は悪魔に魂を売ってでも、それをやり遂げようとするかもしれない。
だから、もしタイムリープが出来たとしたら、あの日の前に戻りたいかな。それで、美織ちゃんを部屋に監禁して、絶対に出さないようにするの。
バカみたいだけど、そうしたら彼女は死なないじゃない?
そんなことも考えたくなるぐらい、彼女の喪失は私にとって大きかったの。……きっと、お父さんにとってもね。



