剣心の様子がおかしい。

 最近は夜遅くまで出かけていることが多いし、何をしているのだろう?

 何か、危ないことに関わっていなければいいけど。最近は闇バイトが低年齢化していると聞くし、悪い人に騙されているんじゃないかって心配になる。欲しいものはテストの結果次第で買ってあげているんだけどね。男の子っていうのは悪事をカッコいいと思う傾向があるから、油断ならない。

 正和さんにも剣心のことを相談したけど、あんまり相手にしてもらえなかった。あの人は昔からそう。細かいことを気にしないと言って、面倒くさいことには関わらない。時々私でもイラっとくる時がある。

 それはそうとして、美織ちゃんがいなくなって26年も経つんだよね。彼女も生きていれば、今頃結婚して幸せな家庭を築いていたのかな、なんて思う。

 いや――美織ちゃんが生きていれば、きっと私の方が正和さんとは結婚なんかしていなかっただろうな。美織ちゃん、正和さんのことが好きだったし。

 何年経ってもあの日を忘れられない。私があんなことを言わなければ美織ちゃんは死なないで済んだんじゃないかって、今でも思い出しては悶々としている。

 直接訊けたら良かったんだけどね。その前に彼女は空へと旅立ってしまった。だから私がその答えを聞けるのは、向こう側へと旅立った時なんだろうな。

 ……なんか沈んだ気分になっちゃったな。過去がどうあれ、正和さんとの時間を大切に生きていこう。結局、私にはそれしか出来ないんだから。

 あれ? 書斎のドアがちょっと開いてる。誰か入ったのかな?

 あ、これ懐かしい。中学の卒業アルバムじゃない。わ~なんかみんな若い。って、そりゃそうか。

 美織ちゃん……。そうだね、ここにも載っていたんだよね。だって、美織ちゃんだって立派な卒業生だもんね。思い出したら涙が出てきた。

 ……ん、なんかメモがある。これ、剣心の字じゃない?

 何この付箋。「美織さんの事故の背景に何があるか調べる」って……。

 え? どういうこと?

 剣心、美織ちゃんについて何か調べてるってこと?

 だって、この日付って美織ちゃんの命日だもんね。え? え? え?

 ……どうしよう。これ、剣心に直接訊いてもいいのかな?

 だって、美織ちゃんは実質的に剣心の名付け親だし……。それで調べたってこと?

 ああ、もう。ワケが分からない。正和さん、剣心に何か言ったのかな?

 まあこれは、一旦確認しないと何も分からないわね。

 どうやって訊こうか。別にそれで怒りだす子ではないけど、私にも色々と訊かれたくないことはあるのよね。

 でも、何があったのか確かめる方が先、だよね……。

 善は急げじゃないけど、剣心に直接訊いてみましょう。

 これだけ時間が経っているのに、不思議なことってあるのね。