あーあ、剣心君が帰っちゃったか。

 いつも思うけど、この瞬間が一番切ないというか、この先に待ち受ける退屈な時間帯を思うとしんどいよね。

 彼は本当にいい子だよね。いや、生きている年齢は同い年なんだけどさ。「美織さんにだって、幸せになる権利があるから」って言われた時、本当に好きになりかけたよね。

 剣心君、なんか正和君に似ているんだよね。

 顔はちょっと違うけど、まっすぐなところというか、バカ正直なところというか、そういうところが本当にそっくり。

 でも剣心君、あたしに何かを隠している気がするんだよなー。それが何かは分からないんだけどさ。強いて言うなら、女の勘ってやつ。まあ、死んでるんだけどさ。

 どちらにしても、実態の無いあたしにここまでしてくれるなんて、本当に天使だよね。

 彼と生きている間に出会えていたらなあ……って、剣心君生まれていないじゃん。

 今度剣心君のご両親がどんな人が訊いてみようかな。あたしの知っている人だったりして。今まで出てきた話も比較的近場の話が多かったし、無い話じゃないよね。

 また彼と会うのが楽しみだな。

 死んでから26年、やっと生き甲斐が見つかった気がする。