「俺、本当に超能力者かもしれない」

 無事に帰った俺は、ベッドに横たわりながらひとりごちた。

 美織さんには言いそびれたが、あれはきっと過去の映像だ。もっと言えば、美織さんの見つけた捨て猫から見た記憶。そうなると、隣にいた男子生徒は中学生時代のオヤジということになる。顔は見切れていて分からなかったけど。

 青白くて透けていても美織さんは美人だけど、やっぱり生きていて生命力に溢れている方が魅力的だ。そういうものだろう。

 それで、俺は物思いに耽る。

 なぜ、あのタイミングでその映像が見えたのか。

 まだ仮説だけど、美織さんの持っている記憶が映像となり、テレパシー的な何かで伝わってきた――彼女が幽霊であることを考えると、そんな現象が起こったところで何ら不思議は無い。今一番有力な説はそれだろう。

 他に考えられるのは、あの場所付近がいわゆる心霊スポットと化していて、不思議な現象の起こりやすい土壌が形成されている。それも結構ありそうな線ではあると思う。

 ともあれ、そこを切り口にして謎を解明していけば、美織さんが自由になれるヒントが出てくる気がする。あんな場所に26年もいたんだ。彼女だって自由にはなりたいだろう。

 でも、自由になったとして、美織さんはどこかへ行ってしまうのかな?

 それこそ、昔好きだった人を探しに、遠くまで……。

 それはそれで嫌だなとは思うけど、彼女にだって幸せになる権利はあるだろうし、俺も俺で幽霊にガチ恋なんかしていたらこの先の人生で色々と苦労するだろう。

 あーあ、リアルでも美織さんみたいな人が彼女になってくれればいいのに。

 隣の席にいる高橋花音もかわいいっちゃかわいいんだけど、なんか俺に対して攻撃的なんだよな。そうなると恋愛対象とはちょっと違うのかな、とも思う。

 俺も将来的には誰かと結婚するのかな。なんだか、あんまり想像が出来ない。

 ……ダメだ。思考が変なことになっている。難しいことは寝てから考えよう。