あれから数ヶ月が経った。
透き通るような青空の下に、ローズマリーやラベンダーが意気揚々と咲いている。
夏とは違い、まとわりつく様な空気はなく、代わりにみずみずしい香りが肺を満たした。
「もう3年生になるのかー。月日が経つのって早いね〜。」
伸びやかな口調でトートがいった。手には、ふわふわのパンに赤いイチゴが詰まったサンドウィッチを持っている。
とろけんばかりにイチゴが輝いて、見ているだけでよだれが出るようだ。
「夏は大変だったからね……。普通の日常ってかけがいのないものだということがわかったわ。
リュシアって子も、元気にしているといいわね。」
目を細めてパラは言う。
あの跡、すぐにリュシアたちは姿を消した。
どこに行ったかはわからない。ただ、ありがとうと手を握り合ったきり、そのままだ。
ヘレナもしばし休暇を取るといって、学校には戻っていない。
失われた母との時間を、取り戻すつもりなのだろう。
軍部のお偉いさんに問い詰められたりしたが、私たちが何か答えることはなかった。
彼らの心地よい時間をまた邪魔させたくなかったからだ。
私の変な噂も消え、平穏な学校生活を送れている。
魔法が使えることは相変わらずないが、それでいい。
自分は自分なのだし、何より、大切な仲間が、私にはちゃんといるのだから。
そういえば。
「ねえ、あのさ、学校祭の準備の時……二人で何を計画していたの?」
ずっと引っかかっていたことを口にすると、二人はコロコロと笑っていった。
「ああ、あれね。別にホーマを仲間外れにするつもりはなかったの。
今思い出すだけで顔が真っ赤になるんだけど……。」
そう言って、トートは耳元でそっと囁いた。
思わず私は驚きの声を上げる。自然と口角が上がっていき、可笑しさが喉元まで込み上げてきた。
「嘘!あの照明で星空を作ろうと思ってたの!?魔法も入れて?」
「そうなのよ。今考えると馬鹿な話よね、しかもあんな状況に。綺麗な夜空を作ってホーマを驚かせよう、なんてね。」
「よかった〜……。」
息をついて背もたれに横たわる。生ぬるい感触が背中を伝い、心の奥の塊が溶け切った気がした。
「え?何が?気にしてたの!?」
「うん、だって……。私、二人に仲間だって思われてないんだって思ってて……。」
「やだあ、そんなことないじゃない!
私たちはずっと、ホーマのこと友達だと思っていたわ。」
「そうだよ!ホーマ!」
二人がのめり込むように否定する。
こんな瞬間なのに、私の心は幸せを噛み締めていた。
だって、今まではこんな事言ってくれる人なんていなかったから。
愛のある言葉は知らなかった。誰かと肩を寄り添い合うような、明るい未来も見えなかった。
だけど。
二人と出会ったその日から、私の生活は大きく変わったんだ。
こんなにも……愛おしいものに。
近くのローズマリーを摘んで、鼻いっぱいに香りを吸い込む。
朝露に、きめ細かく反射された太陽は、七色に光り輝いていた。
これからの未来がどうであろうと。
私は必ず歩み続けられる、と思った。
トートも真似して吸い込むと、花粉が入ったように思わず咳き込んだ。
私たちは思わず大声をあげて笑ってしまう。
天高く、笑い声はどこまでも、どこまでも、続いていくのだった。
透き通るような青空の下に、ローズマリーやラベンダーが意気揚々と咲いている。
夏とは違い、まとわりつく様な空気はなく、代わりにみずみずしい香りが肺を満たした。
「もう3年生になるのかー。月日が経つのって早いね〜。」
伸びやかな口調でトートがいった。手には、ふわふわのパンに赤いイチゴが詰まったサンドウィッチを持っている。
とろけんばかりにイチゴが輝いて、見ているだけでよだれが出るようだ。
「夏は大変だったからね……。普通の日常ってかけがいのないものだということがわかったわ。
リュシアって子も、元気にしているといいわね。」
目を細めてパラは言う。
あの跡、すぐにリュシアたちは姿を消した。
どこに行ったかはわからない。ただ、ありがとうと手を握り合ったきり、そのままだ。
ヘレナもしばし休暇を取るといって、学校には戻っていない。
失われた母との時間を、取り戻すつもりなのだろう。
軍部のお偉いさんに問い詰められたりしたが、私たちが何か答えることはなかった。
彼らの心地よい時間をまた邪魔させたくなかったからだ。
私の変な噂も消え、平穏な学校生活を送れている。
魔法が使えることは相変わらずないが、それでいい。
自分は自分なのだし、何より、大切な仲間が、私にはちゃんといるのだから。
そういえば。
「ねえ、あのさ、学校祭の準備の時……二人で何を計画していたの?」
ずっと引っかかっていたことを口にすると、二人はコロコロと笑っていった。
「ああ、あれね。別にホーマを仲間外れにするつもりはなかったの。
今思い出すだけで顔が真っ赤になるんだけど……。」
そう言って、トートは耳元でそっと囁いた。
思わず私は驚きの声を上げる。自然と口角が上がっていき、可笑しさが喉元まで込み上げてきた。
「嘘!あの照明で星空を作ろうと思ってたの!?魔法も入れて?」
「そうなのよ。今考えると馬鹿な話よね、しかもあんな状況に。綺麗な夜空を作ってホーマを驚かせよう、なんてね。」
「よかった〜……。」
息をついて背もたれに横たわる。生ぬるい感触が背中を伝い、心の奥の塊が溶け切った気がした。
「え?何が?気にしてたの!?」
「うん、だって……。私、二人に仲間だって思われてないんだって思ってて……。」
「やだあ、そんなことないじゃない!
私たちはずっと、ホーマのこと友達だと思っていたわ。」
「そうだよ!ホーマ!」
二人がのめり込むように否定する。
こんな瞬間なのに、私の心は幸せを噛み締めていた。
だって、今まではこんな事言ってくれる人なんていなかったから。
愛のある言葉は知らなかった。誰かと肩を寄り添い合うような、明るい未来も見えなかった。
だけど。
二人と出会ったその日から、私の生活は大きく変わったんだ。
こんなにも……愛おしいものに。
近くのローズマリーを摘んで、鼻いっぱいに香りを吸い込む。
朝露に、きめ細かく反射された太陽は、七色に光り輝いていた。
これからの未来がどうであろうと。
私は必ず歩み続けられる、と思った。
トートも真似して吸い込むと、花粉が入ったように思わず咳き込んだ。
私たちは思わず大声をあげて笑ってしまう。
天高く、笑い声はどこまでも、どこまでも、続いていくのだった。

