空中に、白銀の鳥の翼が舞った。

 それを催すように、宙は赤い光で包まれる。

 私たちはそれを捕まえようと………………上を向き走っていた。
 土煙は舞い、顔もぼろぼろだ。編んだ髪はほつれ、鳥の羽が刺さっている。

 く、屈辱。なんで私がこんな目に遭わなきゃならないのよ……。

 「東の方………。トート、遂に見つけたんだ。」

 「見つけたって……どういうことよ。」

 私の問いに、ホーマが耳元で説明する。みるみる顔色が変わる気がした。

 「ば、ばかじゃないの?あんたたち子供3人で乗り込むつもりだったの?」

 「ええ。だってそうするしかないじゃない。」

 パラが口を挟む。整った困り顔が余計に私を呆れさせた。

 「あんたたちが思っているほど簡単じゃないわよ。
 特にその………………“もう一人の灰の少女”ってやつ?
 あんたは被害者みたいに思っているだろうけど、あいつが一番やばいわよ。もう革命にノリノリ。
 それに……。」

 「それに?」

 「わ、私だって、まだあんたたちに完全に協力するとは言ってないわよ!機会を狙ってるだけで……。」

 顔を赤らめてそっぽを向く私に、ホーマが面白げに言った。

 「そうは思えないな。私はお前をいい奴だとは思っていないが、さっきの反応、微塵も“嘘”は感じられなかった。本当は協力する気満々だろう。」

 「は、はあーー!?そ、そんなわけないじゃない!大体腹立つのよ、あんたがそんなに偉そうに語るのは!」

 「はいはい、二人とも静かに。レジスタンスに見つかったら元も子もないんだから。」

 「私に見つかってる時点であんたらは終わりよ!!」

 「……別にヘレナのことは考えてなかった、てか忘れてた。」

 「あんたら、覚えているからね!」

 ……くっ。
 こいつらといると、なんか調子狂う。

 こんな風にバカ丸出しで言い合うなんて、らしくないじゃない。

 ああは言ったけど、別にこいつらと協力するつもりはないし。

 だけど………。

 なんか、この人たちといると、居心地いいかも?

 本音の私を晒せている気がする。

 ……って、バカバカ!

 そんなはず、ない。

 そもそも、私が勝手に抜け出していいはずがない。

 そしたら、もしかしたら、母様はあいつらに………。

 頭を掻きむしる。余計に髪が絡みついた。

 自分のままでいられないのって、とんでもなくもどかしい。

 恐怖と独立心の狭間に立たされ、心のどこかで私はうずくまっていた。

 今、この瞬間にもあいつらの計画が進んでいる。

 そう思うだけで気持ちは高ぶって、自然と足が早まっていた。

☆*:.。. ……………….。.:*☆

 「なかなか、みんな来ないなー。」

 下を見上げながら呟く。

 もちろん、今の私は“鳥”だから、私の言葉は誰にもわからない。

 ただの鳥の鳴き声だと思う筈だ。

 本物の鳥が仲間だと思って取り巻いちゃうのがたまに傷なんだけど………。

 まあ、これで情報が得れるなら、大したことではない。鳥、かわいいから好きだし。

 それよりも………。

 くちばし(?)を鳴らしながらレジスタンスの方へと視線をずらす。 同時に、彼等とも目が合ってしまった。

 これはきっと偶然ではあるまい。

 奴らきっと、“私に気づいてしまっている”。

 さっきから何人かが私の方を見ては話し込んでいる。

 ここら辺では見ない種類、見ない羽毛の色。

 言葉がわかるかのように執拗についてくる様子。

 誰だってきっと気づく………これは普通の鳥ではないと。

 もっと警戒すればよかった。

 私ってば、いつもそうだ。一つのことに夢中になれば、一切周りが見えなくなってしまう。

 自分の探究心が満足いくまで、離れられない。
 他のことなら、別にいい。何かあっても、私に返ってくるだけ。

 だけど、今はダメだ。
 みんなの命がかかっているから。

 不意に昔のことが思い出された。

 「あいつ、やばいよな。空気読めないっていうか。」

 「この前、知らないおじさんに変なこと言ってなかった?厨二病?痛すぎ〜。」

 本の批評を言うような感じで、彼女たちは談笑し合う。
 ここに私が居るとは知らずに。

 腐り切った目と、脳に浮かぶ言葉を思考すらせずに並べ立てている。

 …………わかるもんか。

 あんな奴らにわかるもんか。私の情熱が、ポリシーが、哲学全てが。

 わかってたまるものか。彼女たちとは違う。もっと複雑に思考回路が混ざり合う芸術そのものを愛しているんだ。 
 傲慢に人を評価する奴らとは違うんだ。

 だけど。

 今の私じゃまるで“奴ら”以下だ。

 偉そうに、机上の空論を並べて、みんなを巻き込んで……。

 顔を覆いたくなった。


 ダアン!

 耳元で、銃弾が掠れる音がした。

 白色の羽が空中に舞い散る。

 白と朱色が混じり合い、紅花みたいな鮮やかなものが浮かんだ。

 それと共に、鮮烈な痛みが走る。

 な、何?

 「ホゲエ!ホゲエ!」

 「あの鳥公、騒いでやがるぜ。食うか?」

 「バカ、うまそうじゃないだろ。いかにもトロそうだし。」

 はあっ?

 あいつらに撃たれた上に、めちゃくちゃ失礼なこと言うじゃない。

 あんたらの方がトロイよ!食べ物のことばっか考えて!

 不満げに、羽をあげて威嚇する。

 見せつけのように、また銃弾が一つ、撃たれた。

 なんとか避けて見せるも、さっき撃たれた耳が痛んで、思ったように動けない。

 威嚇してた場合じゃなかったみたいだ。

 もしかして、耳ごと無くなってたり……しない、よね?

 体がどんどん落ちていき、羽毛で覆われた手足は、人間のようなしなやかな手足に変わっていく。

 嘘……。

 よりにもよって……。

 体が戻ってきている。これじゃあホーマたちに知らせる前に……レジスタンスに捕まってしまう。

 背中に冷風が吹き込んだ気がした。

 銃を撃った、いかにも何も考えてなさそうな二人組は、ニタニタとコチラを見ている。

 一人は小太りで、対照的にもう一人は痩せている。二人ともカビたバンダナのようなものを巻いていた。

 ドシリ。

 思う内、私の体は地面に叩きつけられる。

 骨ばった背中が地面に食い込み、声をあげたいくらいの鋭さが走る。

 だが、その状況がそれを許さない。

 ………………やばい。

 冷や汗が流れる暇もない。

 「うあ……?こいつ“神”だったのか?」

 「だから言ったろ。俺は食うために撃ったんじゃないって。
 さっきからこいつ、彷徨ってたろ。ここらじゃ見ない鳥のくせに。
 さっきも言葉がわかるように反応してたじゃないか。」

 痩せた男は火縄銃の先で私の手足を突く。冷たい金属の感触がした。

 「こいつ……子供か?」

 「制服も着ている限り、ここの学校の生徒だろう?………………大して苦労もせずに育ったんだ。羨ましいものだぜ。」

 目で、追うことしかできない。 耳から血が流れ落ちる感触がした。 ぬるい感触が首を伝う。


 「お嬢ちゃんよ………。お遊びはもう終わりだぜ?」

 力を込めた男の足が近づいてくる。

 「代わりにおじさんが遊んでやるからよお!舐めやがって!!」

 立ち上がりたいのに体が動かない。

 こんなんで私の人生終わるの?こんな奴らのせいで?

 嫌……。

 目を瞑った時だった。

 「そこまでだ。」

 凛とした、女の声がした。

 どことなく、ホーマと似た声質。 それでいて沈み込むようなしっとりとした声だ。

 何者……?

 ゆっくりと視線を向ける。

 ……黒髪を短く切り込み、男物のライフジャケットを着た少女がいた。

 やっぱり、顔形もホーマに似ている。コチラの方が少し年上で、いくらか鋭い目つきをしている違いはあるけども。

 もしかして。

 ……この少女が、“もう一人の灰の少女”?

 「リュシア?どうしてここに?」

 「気まぐれさ。それよりこの子かい?変な鳥がいるって、お前たちが騒いでいたのは。」

 言いながら少女は私の顎を上げた。

 ……何を考えているかわからない目。
 心の奥底で、“何かを恐れている”目。

 ヘレナみたい。レジスタンス側の人ってみんなこうなの?

 ………みんな、何を見ているの?

 「可愛い子じゃないか。わざわざ遊びにきてくれたのかい?」

 揶揄うように目を細める。言い返そうとしたが、声にならずに言い淀んだ。

 「このガキ、俺らのことバカにしたがる。焼き鳥にでもしようぜ!リュシア!」

 小太りの男が息を撒き散らしながら言った。

 「落ち着け、ループス。何も来客に、そんな失礼な真似はしなくていいじゃないか。」

 「正気か、リュシア!こいつは“神”なんだ。生かしておけるか!」

 「そんな野蛮な行為、やっていることは彼らと同じだろう。それに、殺してしまうのは勿体無い。」

 じゅるり。

 リュシアと呼ばれたその少女は、舌なめずりをした。

 「とことん、お話ししようじゃないか。そして、見せてあげよう。我らの“楽しいお祭り”を。」

 そうして私は、半ば引きずられながら目前の洞窟に押し込まれた。

 ………………ねえ、ホーマ、パラ。

 話し合うって、結構、難しいみたい。うまくいかないよ。

 遠くで、何人かの足音が聞こえた気がした。

☆*:.。. …………………………….。.:*☆

 乾いた木が火に包まれる、焦がした匂いが充満している。

 …………どこまで来たんだろう。

 洞窟の穴はもう見えず、乱暴に引っ張られたせいか、体のあちこちが痛んで、動かしずらい。

 このまま逃げようか、と思ったけれど……。

 失敗するリスクの方が高いだろう。見つかったら間違いなく、次はない。

 それより、私をどうするつもりなんだろう。
 彼らの行動が読めず、不安ばかりが広がっていく。

 目だけは活発で、キョロキョロとあたりを見渡していた。
 私を撃った男と、引っ張っていた少女の姿は見当たらない。

 代わりに番をしているような、白マントの人間が数人、焚き火を取り囲んでいた。

 白いマント。
 ……もしかしたら、タレス先生が言っていた、集団って、彼らのこと?

 その証拠に、マントには“炎”と“折れた剣”が縫い付けられていた。

 彼らは”過激派“の象徴だ………。

 そんなことを彼は言っていた気がする。だったら尚更、この状況は危ういだろう。

 頭がぼうっとする。
 止血をしていないからだろう。

 ゾワゾワと背筋が立つ。治癒魔法はこの状況で使えない。何されるかわからないからだ。

 恐怖で正常な判断ができなくなっている。

 かと言って、”神“である私を、彼らが手当するとは到底思えない。
 むしろ、これを狙っていたかも。

 ……ママ。パパ。

 2人の顔が涙で歪む白昼夢を見た。



 ドンッ!ドドン!

 な、何事!

 思わず飛び上がる。硬い地面が丸ごと揺れるような音だ。

 見ると中央に円陣が組まれ、その間には……黒い、何か?

 見てはいけないような気がした。
 カッポリ、歯を剥き出しにした口。
 黒い器のようなもの。
 穴から木の根にようなものがはみ出し、大地を割いて地下に潜り込んでいた。
 それは地に縛られる呪いのようなものであり、何かを支える柱のようでもあった。

 がっしりした男のような手がそれを支え、白い女の手が何かを飲ませる。

 どろどろとした、赤茶けた液体だ。
 何かは言いたくもない。

 吸い込むように黒い器は言った。歯がカタカタ笑っている。

 どっしりと幹が座り込んでいて、行く手を阻まんでいるようだった。

 「莠御ココ縺ョ螂ウ蠢?ヲ√□縲?逾槭?髢?繧偵≠縺九!!」

 え、なんて?

 腹の底から気味の悪い声が頭に響く。

 それはこびりついて離れようとせず、頭が不気味な声に染まっていく。

 周りの人間たちは手足という手足をくねらせて奇妙な踊りを始めた。

 まるでうなされた日に見る悪夢のようだ。

 反響するように、人々は唱える。

 「謌代i縺ッ逕溯。?繧呈アゅa繧九??譁ー縺励>荳悶r豎ゅa繧九◆繧√??」

 言語とは言えない、何かを喉元で絡まして彼らは発していた。

 自我があるかはわからない。何かのからくり人形のように彼らは喚き歩いている。

 私は今まで書物で様々な言語や文化を学んできた……つもりだ。

 でもこれは、それらとは違う。

 トランスしているのでもない。

 “精神”そのものが感じられない自堕落な何かだ。

 霊そのものを喰われ蠢いている物体。

 ……ダメだ。

 ここにいては絶対ダメだ。

 恐怖とかどうでもいい、逃げよう!

 本能が黄色信号を出しては、点滅している。

 音も出さずにそろりそろりと交代し、飛行魔法を使おうとする。

 手が震えて、魔法が使えない。

 自然と息が上がるのがわかる。そのわずかな動きすら見逃さなかったのか、黒い器がこちらを話しかけてきた。

 「ソコノ娘……ナニシテイル……。我ラノ園カラ勝手ニ抜ケ出ス気カ……。」

 軽蔑と傲慢さが混じった声でそれは言った。

 「??」

 「吾ニ秘メ事ガデキルト思ウナ……。小娘程度ガ図ニ乗ルナ……。」

 集団も、ぽっくりと穴が空いたような目で見つめる。

 頭の信号が切れたようにチカチカ点滅していた。

 「吾ハ不滅ダ……。貴様程度ガ己ノ行動ヲ定メラレルト思ウナ……。」

 言った瞬間、その物体は“何かを吐き出した。”

 黒い、墨のようなものだ。ベタ、とそれは床に張り付いて止まった。と同時に私の体も動けなくなる。

 それどころか声も出せない。チャックを占められたように、くぐもった声しか。

 あれってもしかして……

 “落神”

 その言葉が頭に浮かんだ。

 落ちた神と書いて落神。

 彼らは“神“であったのに、力を外され、姿形も奪われて、ゲテモノとなってしまった神様のことである。

 多くの落神は何らかの罪を犯したものだ。

 しかし落神となって何百年も経ち、それでいて恨みが強いものは……

 このような禍々しい力を持つようになる。

 本でしか読んだことがないが、間違い無いだろう。

 それにしても……

 レジスタンスは”神“を恨んでいたのでは? 私の扱いといい、それは確かだ。

 じゃあ何で落神とは言え“神”を立て奉っているの?

 利用されたんだろうか? 何のために?

 疑問がとめどなく流れる。

 …………知りたい。

 真実を突き止めたい。
 みんなのためにも。

 好奇心が蠢いた。

 さっきの混乱が霧のように晴れていく。 頭は冷たい水を浴びたように思考が鋭く冴え渡る。

 レジスタンスは、神を恨み、この世界を打ち壊そうとしている反対派の集団。

 落神は…………自分を陥れた他の神たちの復讐に燃える存在。

 ……この二つ、完全に利害が一致するじゃないか。

 レジスタンスは神の力を借りられる。落神は力のない自分の代わりの実行犯を作れる。“復讐”のための。

 形はどうにしろ………………双方とも協力し合うのは互いにとってメリットしかない。

 心の中で強く念じる。相手に言霊を送ろうと、伝えたいことだけを考えた。

 私の家は“言葉”を操る一族………………代々、最高書記官長の座にあった。

 その家のものはみな、言葉を操れることができ、喋らずとも思いを伝えられるという。

 ……扱い方次第では、命はないと母に一度言われたことがあるが。

 この後に及んでは、やるしかない。

 それを使うしか。

 待ってね、みんな。 きっと会えるから。

 この状況、変えて見せる。

 『ねえ、私なら、あなたたちのこと、助けられると思うけど?』

 「小娘ガ………………喋ルナトイッタダロウ」

 心なしかイライラしたように落神は言う。 私は少し笑っていった。

 『やだなあ。喋っていないよ。私はあなたに心の中で念じた思いを伝えているだけ。”言霊“だよ。神のあなたなら、わかるでしょう?』

 あえて挑発するような言い方をすると、少し面食らったかのように落神は捲し立てる。

 「コ、タカガ小娘ガソンナ真似デキルカ!」

 『ふふ。ねえ、あなた達は今、とーっても困っているんじゃない?不安で不安で震えているんじゃ?
 だって、あなたたちの復讐のための力が足りていないから。』

 「キサマ……。」

 『たしかにあなたたちは強いかもしれない。でもそれは表面だけで、土台がなくてとってもぐらぐらしているの。
 あなたたちは革命を起こすための”信頼“と十分な”権威“もとい後ろ盾がないから。
 だって落神と人ですものね。』

 「馬鹿ニシテイルノカ!」

 『やだ、ごめんなさい。そんなつもりはないの。ただ”事実“を述べているだけ。そう怒らないで?
 ………………多分私、あなたたちのこと助けられると思うから。』

 「……ハ?」

 『この通り私は言霊が送れる。この世界でね、何の修行もなくこんなことができるのはある一族だけなんだよ?』

 「……………マサカ。貴方ハアノ一族ノ方ダッタトイウノカ……。」

 落神は器がこぼれ落ちるほど大きく震え出した。ようやく私の言おうとしたことがわかったみたいだ。

 心が恐ろしいほど据えていた。緊張も、恐怖もない。まるで最初から堂々とした少女だったかのようだ。 

 落神の力も弱まったのだろう、私は身動きが取れるようになった。 見せつけるように立ち上がって見せる。

 代わりに落神は、下へ下へとずり落ちていった。

 もう、文句一つ聞こえてこない。

 『最高書記長の跡取り娘だよ。その意味、貴方ならわかるでしょう。
 喉から手が裂けるほど、欲しいんじゃない?私と言うカードを。…
 私の仕事次第では、”革命“を果たせるピースが揃うと思うけど?』

 「ア、ア……。」

 器から、うめき声が聞こえる。 頭を掻きむしるように左右へと蠢いて、彼の言葉は漏れ出た。

 「ホシイ……。ソレ……。クレ……。」

 黒い手が、こちらに向かって伸びてくる。墨が滲んだようにべっとりと粘りつき、癪気のような気配を纏っていた。

 言葉選びなどしない、欲に埋もれた獣の姿が露わになっていく。

 『そんな言い方じゃ、上げられないな。もっと敬意を示してもらわないと。……条件があるよ。』

 「ソレ、ヤレバ、クレル……?」

 『もちろん。1、情報を全て私に明け渡すこと 2、暴動は全て止めること。
 守らなければ…………貴方の命は私が消す。存在ごと。

 それでも貴方はやるの?』

 思ってもいない言葉が出て内心怖気ずく。

 動揺を隠すようにつんと顎を逸らして見せると、愚かにも落神は手を組んで平伏し出した。

 「ワカッタ……。守リマス、協力シテ下サイ。」

 満足げに私は微笑む。うまくいった………………その興奮よりも、目前のことに心が冷えわたる。

 「じゃあまずは、部屋を案内してもらえる?儀式をしている部屋に。」

 低く扉が唸る音がした。