「彩雪です。参りました」
「入れ」
中から聞こえた父の声に障子を開けると、上座には父の悟史が座り、母の良理子と千代子もいた。中に入り、下座に正座をする。
「我が家に、闇狩家から縁談があった」
告げられた内容に、彩雪は驚いた。
闇狩家といえば彩津国きっての軍人家系で、何人もの将軍を輩出している。現在の当主は准将で、その息子は優美な青年だと評判だ。
「お前も知っているだろう。闇狩家といえば彩津国きっての軍人家系で侯爵。何人もの将軍を輩出している。現在の当主は准将で、高い霊力を破魔に使い、数々のあやかしを退治なさっておられる。そのひとり息子は軍医だ」
「だけどその人、病弱でいつ死ぬかわからないのよね?」
千代子の声に、彩雪は顔をしかめた。なんと失礼発言だろう。
「ああ、私も治癒に行ったことがあるが、重度の霊力不全症候群だ。一生治らんだろう」
悟史が答える。
霊力不全症候群は霊力の体の巡りが悪く、さまざまな体調不良を起こすと言われている。原因不明で治療法がなく、霊力が高いほど重症になるという。熱が出たら熱冷ましを飲ませるなどして対症療法でごまかしごまかし、過ごすしかない。
「霊力を抑える薬を処方したこともあるが、それでもなにも効果はなかった」
霊力は命の根源の力であるため、霊力に関わる薬の製造や使用には特別な許可が必要だった。悟史はその許可をもらっている。
「今は二十七歳だが、うわさではもって一年とのことだ。だから治癒の力を持つうちに縁談を持ってきたのだろう」
「嫌よ、そんなすぐ死ぬ人と結婚なんて!」
千代子が柳眉を吊り上げると、悟史はふっと笑った。
「入れ」
中から聞こえた父の声に障子を開けると、上座には父の悟史が座り、母の良理子と千代子もいた。中に入り、下座に正座をする。
「我が家に、闇狩家から縁談があった」
告げられた内容に、彩雪は驚いた。
闇狩家といえば彩津国きっての軍人家系で、何人もの将軍を輩出している。現在の当主は准将で、その息子は優美な青年だと評判だ。
「お前も知っているだろう。闇狩家といえば彩津国きっての軍人家系で侯爵。何人もの将軍を輩出している。現在の当主は准将で、高い霊力を破魔に使い、数々のあやかしを退治なさっておられる。そのひとり息子は軍医だ」
「だけどその人、病弱でいつ死ぬかわからないのよね?」
千代子の声に、彩雪は顔をしかめた。なんと失礼発言だろう。
「ああ、私も治癒に行ったことがあるが、重度の霊力不全症候群だ。一生治らんだろう」
悟史が答える。
霊力不全症候群は霊力の体の巡りが悪く、さまざまな体調不良を起こすと言われている。原因不明で治療法がなく、霊力が高いほど重症になるという。熱が出たら熱冷ましを飲ませるなどして対症療法でごまかしごまかし、過ごすしかない。
「霊力を抑える薬を処方したこともあるが、それでもなにも効果はなかった」
霊力は命の根源の力であるため、霊力に関わる薬の製造や使用には特別な許可が必要だった。悟史はその許可をもらっている。
「今は二十七歳だが、うわさではもって一年とのことだ。だから治癒の力を持つうちに縁談を持ってきたのだろう」
「嫌よ、そんなすぐ死ぬ人と結婚なんて!」
千代子が柳眉を吊り上げると、悟史はふっと笑った。



