「霊力は回復したようだが、訓練を受けていないお前は霊力を破魔に使うことはできまい。今日をお前の命日にしてやる！」
　千代子が怪力で幹雅をふりほどいた。彩雪に襲いかかる千代子をかばい、煌真が彼女を抑える。

　その隙にあやかしの本体が彩雪に襲いかかり、幹雅が銃を撃った。が、狙いははずれて蛇男がしっぽをふるう。
　彩雪はかろうじて逃げることができた。が、足取りはよたよたしている。

「彩雪さん！」
　煌真が放つ次弾は蛇男に命中し、彼は激痛に苦悶を浮かべた。黒い血がぽたぽたと垂れる。
「うう……なんだ、これは」
　うめく蛇男に、幹雅も発砲する。
　あやかしは避けられずに銃弾で貫かれ、うめき声を上げる。

「おかしい、人間の武器は我々には通用しないはずなのに……」
「うわ、低級ならこれ一発で倒せるのに」
　幹雅が驚きの声を上げ、煌真はさらに撃つ。が、致命傷には至らない。

「ふん、わかったぞ。その小さな鉛球に霊力をこめて撃っているのだな。その程度で俺が倒せるものか」
　見抜いたあやかしがせせら笑う。その傷はみるみるうちに塞がっていく。
　そうして撃たれながらも千代子へと足を延ばす。
　千代子は自らあやかしへ近付こうとして暴れ、幹雅が必死におさえる。

「煌真さまが好きなら大人しくしてくれよ！」
　幹雅の叫びはむなしく、千代子は暴れ回る。
　あやかしが千代子を人質にしようとしている。
　彩雪は察したが、どうしたらいいのかわからない。
　自分は煌真のように霊力を込められるような武器を持っていない。