その後ろから制服の白いワンピースと帽子を身にまとった看護婦が追いかけて来る。
「癒島さん、病室で先生を待ちましょうね」
「私は妻なのよ。煌真様に会いたい」
 千代子はふらふらと歩いてくる。その目の焦点は合っていない。

「彩雪さんは隠れた方がいい」
 煌真が言うが、遅かった。
「彩雪! なんで煌真さまのそばに!」
 カッと目を見開き、千代子が叫びながら駆け寄って来る。

「癒島さん、落ち着いて!」
 看護婦が止めるが、千代子は振り切って彩雪に駆け寄り、手を振り上げる。
 彩雪はお腹をかばってうずくまった。

「やめろ」
 唸るような声とともに、煌真が千代子の腕をつかんで止めた。
「煌真さま、そいつは私たちの幸せを邪魔するものですよ。退治しないといけません」
「ふざけるな!」
「先生、落ち着いてください」
 怒鳴りつける煌真に、看護師がうろたえる。

「奥様は俺が送ります。先輩は患者の対応を」
 幹雅が言い、煌真は悔しそうに頷いた。
「彩雪さん、すまない」
「いいえ、お仕事頑張ってくださいませ」
 彩雪は頭を下げ、千代子を押さえる煌真に背を向ける。
 幹雅が千代子に警戒し、彩雪の一歩後ろを歩いて付いてくる。