「彩雪さん、病院に煌真の様子を見に行って来てくださらない?」
藍子の提案に、彩雪は緊張した。
「私が行きたいのだけど、母親が行くのはよろしくないでしょう? ね、お願い」
おねだりするように頼まれて、彩雪は頷いた。もとより彼に会いたい。
一緒にお弁当を作り、藍子が手配してくれた人力車で陸軍病院へ向かった。
陸軍病院の門はコンクリート製で大きく、和洋折衷の作りとなっている。
門前で駄賃を払って人力車を降り、屋根のついた玄関をくぐってスリッパに履き替え、板張りの廊下を歩く。
受付で「闇狩の妻ですが」と名乗ると、受付の女性は目をまん丸くした。
「本物の奥様! 少々お待ちください」
着物につけたエプロンを翻し、彼女は奥へ行き、しばらくして戻ってくる。
「第三診察室へお廻りください」
彩雪は礼を言って廊下を進み、第三診察室をノックした。どうぞ、の声でドアを開けると、やつれ果てた煌真がいた。
「煌真さま、具合が悪いのですか?」
彩雪は慌てて白衣の彼に駆け寄る。
「彩雪さん、どうして?」
「様子を伺いに参りました。お弁当を持って来ております」
「それは嬉しい。あなたの料理はおいしいからね」
笑みさえも疲労が濃くて、彩雪の胸が痛む。
「失礼しますね」
彩雪はそっと彼の手を握り、癒しの力を送り込む。黄金の光がふわふわと舞う中、彩雪の脳裏に違和感が生まれる。
先日ほどいたもつれが、また心臓のあたりにできていた。再度、慎重にほどいていく。
藍子の提案に、彩雪は緊張した。
「私が行きたいのだけど、母親が行くのはよろしくないでしょう? ね、お願い」
おねだりするように頼まれて、彩雪は頷いた。もとより彼に会いたい。
一緒にお弁当を作り、藍子が手配してくれた人力車で陸軍病院へ向かった。
陸軍病院の門はコンクリート製で大きく、和洋折衷の作りとなっている。
門前で駄賃を払って人力車を降り、屋根のついた玄関をくぐってスリッパに履き替え、板張りの廊下を歩く。
受付で「闇狩の妻ですが」と名乗ると、受付の女性は目をまん丸くした。
「本物の奥様! 少々お待ちください」
着物につけたエプロンを翻し、彼女は奥へ行き、しばらくして戻ってくる。
「第三診察室へお廻りください」
彩雪は礼を言って廊下を進み、第三診察室をノックした。どうぞ、の声でドアを開けると、やつれ果てた煌真がいた。
「煌真さま、具合が悪いのですか?」
彩雪は慌てて白衣の彼に駆け寄る。
「彩雪さん、どうして?」
「様子を伺いに参りました。お弁当を持って来ております」
「それは嬉しい。あなたの料理はおいしいからね」
笑みさえも疲労が濃くて、彩雪の胸が痛む。
「失礼しますね」
彩雪はそっと彼の手を握り、癒しの力を送り込む。黄金の光がふわふわと舞う中、彩雪の脳裏に違和感が生まれる。
先日ほどいたもつれが、また心臓のあたりにできていた。再度、慎重にほどいていく。



