「ああ、早く休みにならないかしら」
「でも今日は天気がいいから気分がいいわ」
「あとは邪魔者がいなきゃね」
 三人がちらりと彩雪を見て、彩雪はだまってごはんを口に入れる。

 女中が配膳した彩雪の朝食は、茶碗に半分の米と椀に半分の具のない汁。たくあんのしっぽ部分がついているだけ、今日は豪勢だ。
 女中たちはてんこ盛りの白米に玉子、青菜の汁にたくあんだ。

 朝食を終えると、女中頭が言った。
「あんたは洗濯ね、私たちは掃除に行くから。洗い物もやっておくんだよ」
 返事も待たず、三人はさっさと席を立った。
 家事の中でも一番の重労働である洗濯は、いつも彩雪に押し付けられる。

 彩雪が座敷に行くと、そこにはまだ両親と妹がいて談笑している。
「失礼します。お膳を下げに参りました」
 声をかけ、座敷に入る。
 千代子ににらまれているのがわかったが、目を合わせないようにした。

 彼女の膳を持ち上げたとき、ぐっとそでを引っ張られる。
「あ!」
 膳が傾いて皿が落ちて割れ、椀に残っていた汁が飛び散る。

「きゃああ!」
 千代子は悲鳴を上げて体をのけぞらせた。

「ひどいわ、お母様の買ってくださった着物が!」
「すみません!」
 彩雪は慌てて謝り、すぐに割れた皿を拾おうとする。が、立ち上がった千代子がその手を踏みつけた。

「——!」
 破片が刺さり、彩雪は顔に苦悶を浮かべる。