これ以外にも、煌真はたくさんの着物と洋服を買ってくれた。遠慮する彩雪に「今まで使い道がなくて貯めていたんだ。甲斐性があるところを君に見せたいんだ」と言ってかんざしや指輪なども買ってくれていた。
「彩雪、大丈夫か?」
「はい」
 煌真にきかれ、彩雪が頷いたときだった。
 女中のひとりがそっと近寄って来て、煌真に言う。

「煌真さま、彩雪さまのご家族だと名乗る方が玄関においでです」
 言われた直後、彩雪の顔からさっと血の気が引く。
 煌真は眉を寄せて使用人を見た。

「癒島家は誰も招待していないのだが」
「私もそう申し上げたのですが、自分たちが呼ばれないわけがないとおっしゃって……あ!」
 女中はドアを見て声を上げた。

 そこには勝手に入って来たらしい彩雪の両親と妹がいた。
 それを見た彩雪は思わず固まった。
 両親以上に、千代子が怖かった。誰よりも彩雪を敵視して、彩雪を痛めつけることに対して余念がない。
 華やかな振袖を着てビーズ刺繍のバッグを持つ千代子は、ここにいる誰よりも美しく見えて、彩雪は自分が霞むのを感じた。

「おお、これはこれは」
 悟史が相好を崩して煌真に近付く。
「噂に聞きましたぞ、すっかり健康を取り戻されたとか。これも我が娘のおかげですな」
 がはは、と下品に笑う悟史に、彩雪は顔を伏せた。