「これは……!?」
 頭の上から降って来た声に、彩雪はにこっと笑みを返す。
「私、うまくできましたでしょうか?」
「彩雪さん……君はいったいなにをしたんだ。体が、妙に軽い」

「私にもよくわかりません。ただ、霊力の流れがこんがらかっている場所があったので、それをほどきました」
「そんなこと、聞いたことがない」
 煌真はただ驚いて彩雪を見つめる。

「彩雪さん、大丈夫? 異能を使って疲れたのではなくて?」
「大丈夫です、ほら、こんなに元気です」
 藍子に答えた直後、めまいにくらんで足元がぐらついた。
「無理をするものではないよ」
 煌真は彼女を抱き留め、優しい声で包む。

「では今日はもうお休みになって。詳しく考えるのは明日にしましょう」
 藍子の言葉でお開きとなり、彩雪と煌真は寝室に行った。
 煌真の役に立てた。その充実感と彼の温かさに包まれ、彩雪は深く眠りに落ちていった。



 それから彩雪は毎日、霊力を煌真に送り、彼はみるみるうちに健康を取り戻した。
 癒しの異能が戻ったことは、この家だけの秘密だった。迂闊に外に漏らせばどうなるかわからない。
 一週間後、仕事から帰った煌真は居間で出迎えた彩雪に言った。

「今日も調子が良かった。すべて君のおかげだ」
 煌真はちゅっとキスを落とす。
「こ、煌真さま!」
 ほかには誰もいないが、彩雪は焦ってしまう。