事情は調べがついていると言われた。自分が実家でどのような扱いを受けていたか、もう知られているということだろう。
藍子も知っているだろうに、嫁にと請われた。そんな未来が自分にあるのだろうか。
彼の美しい横顔を思い出し、かあっと顔を伏せる。
彼は自分には興味がなさそうで、きっと望みなんてない。
いっときでも嫁にと思った自分が恥ずかしくて、彩雪は顔を上げることができなかった。
彼との距離が縮まったのは、奇しくも彼の病が原因だった。
三日後の夜、夕食に現れなかった彼を心配して、藍子の許可をもらっておじやを作った。
部屋を訪れると、彼はベッドに体を起こして彩雪を出迎えた。
「すみません、このような姿で」
「私こそ失礼します。おじやを作ってきました」
ベッドサイドのテーブルに置くと、熱で赤い彼の顔にふっと笑みが浮かんだ。
「おいしそうな匂いですね」
「ありがとうございます」
「……使って申し訳ないのですが、棚の右上の引き出しから薬をとっていただけますか」
「はい」
彼に言われてチェストの引き出しを開ける。が、そこにはなにも入っていなかった。
「すみません、薬がないようです」
そう言うと、彼はベッドを降りて彩雪の隣に並んで覗き込む。
家族以外の男性が隣に立つなんて初めてのことで、彩雪の胸がどきりと鳴る。
「そういえば、なくなりそうだから次を頼まなくてはと思って忘れていました」
彼はくらりと倒れかけてチェストにもたれかけて体を支える。
藍子も知っているだろうに、嫁にと請われた。そんな未来が自分にあるのだろうか。
彼の美しい横顔を思い出し、かあっと顔を伏せる。
彼は自分には興味がなさそうで、きっと望みなんてない。
いっときでも嫁にと思った自分が恥ずかしくて、彩雪は顔を上げることができなかった。
彼との距離が縮まったのは、奇しくも彼の病が原因だった。
三日後の夜、夕食に現れなかった彼を心配して、藍子の許可をもらっておじやを作った。
部屋を訪れると、彼はベッドに体を起こして彩雪を出迎えた。
「すみません、このような姿で」
「私こそ失礼します。おじやを作ってきました」
ベッドサイドのテーブルに置くと、熱で赤い彼の顔にふっと笑みが浮かんだ。
「おいしそうな匂いですね」
「ありがとうございます」
「……使って申し訳ないのですが、棚の右上の引き出しから薬をとっていただけますか」
「はい」
彼に言われてチェストの引き出しを開ける。が、そこにはなにも入っていなかった。
「すみません、薬がないようです」
そう言うと、彼はベッドを降りて彩雪の隣に並んで覗き込む。
家族以外の男性が隣に立つなんて初めてのことで、彩雪の胸がどきりと鳴る。
「そういえば、なくなりそうだから次を頼まなくてはと思って忘れていました」
彼はくらりと倒れかけてチェストにもたれかけて体を支える。



