余命一年の優美なる軍医は能力を無くした治癒師を溺愛する

「どんな医者様や治癒師に見て頂いても治りませんでした。自分が医者になって治す、と軍医になったのは良いが、体調は悪くなる一方です。霊力の病には黄金の蓮華の蜜が効くという伝説もあるが、そんなものは存在しません」
 それは彩雪も聞いたことがあるが、彼の言うとおり、実在はしないだろう。

「あやかしのせいかもと屋敷に結界を張ったが、体調は変わらない。私は短命となるでしょう。余命一年だと噂になっているのも聞きましたが、もっと短いかもしれない。こんな男の嫁になどならぬほうが良いのです」
 煌真の言葉に、彩雪はなにも返せなかった。

「そんなことないわ!」
 返す藍子の声は悲痛だった。
「彩雪さん、私はね、結婚をすれば愛で体調が良くなると思っているの。どうかお願い、うちの子はいい子よ、ぜひ結婚して子どもを作ってくださいな。子はかすがいと言うでしょう? あの子があちらに逝ってしまわないように、かすがいとなるお子を作ってくださいな」
「母さん!」
 煌真が大声で遮り、彩雪はびくっと体を震わせた。藍子は動揺もなく自分の息子を見る。

「結婚したら、彩雪さんはここにいられるしかわいいお嫁さんができて、いいこと尽くしなのに」
「勝手なことを。お嬢さん、この人の言うことは気にしなくてもいいですよ。結婚しないからといって追い出すこともしません。事情は調べがついております。どこか良い行き先を父と検討しております。私はこれで失礼します」
 そう言って煌真は席を立つ。
 その背を見送り、藍子は彩雪ににこっと笑みを向けた。

「あの子の言うことは気にしなくていいのよ。あなたは好きなだけここにいらして」
「ありがとうございます」
 お礼を言い、彩雪はどきどきしながら自分の料理を食べる。