余命一年の優美なる軍医は能力を無くした治癒師を溺愛する

 せめてものお礼に、夕食は作らせてもらった。政経は仕事で帰りが遅れており、藍子と煌真、彩雪の三人の食卓となった。
「こんな料理上手な方が嫁に来て頂けたら、そんな嬉しいことはないわね」
「……ありがとうございます」
 彩雪は恐縮して藍子に答える。
 今まで、まずいと罵られることはあっても、褒めてもらえることはなかった。

 ふと煌真を見ると、箸がまったく進んでいない。
「今日も体調がよくないの?」
 藍子の問いに、煌真は頷く。
「すみません、せっかく作っていただいたのに」
「こちらこそ申しわけございません」
 彩雪の謝罪に、煌真は首をかしげる。

「あなたが謝るべきことはひとつもないでしょう?」
「お口に合わないものを作って……材料を無駄にして、申しわけございません」
「無駄にしているのは私でしょう」
 冷たい口調に、彩雪は身をすくめる。

「煌真、そういう言い方は良くないわ。体調が悪いのにお勤めにいくから悪化するのよ」
「陸軍病院にお勤めでいらっしゃるのですよね。御立派です」

「そうなの、だからほかの健康な男性と変わらないのよ」
「母さん、欺瞞(ぎまん)はよくない」
 そう言ってから、煌真は彩雪を見る。

「お嬢さん。私が霊力不全症候群なのはご存じで?」
「父から聞いております」