金色の光がふわふわと舞うのが好きだった。
 なにより、異能を使うことで周りの人たちが笑顔になるのがとても嬉しかった。
 その日も屋敷に連れて来られた病人に治癒の力を使った。彼は政府の高官だというが、彼女にはそんなことは関係ない。癒しの力で人々を笑顔にすることが喜びだから。

彩雪(さゆき)癒島(ゆしま)家の誇りだな。あやかしからの傷も簡単に治すとは』
『きっと良い治癒師になるわねえ。黄金の蓮華の蜜なんかなくても大丈夫だわ』
 父と母がそう言ってほめてくれるのが嬉しかった。伝説の万能薬、黄金の蓮華の密と同等と言ってもらえるなんて、嬉しくて飛び跳ねそうだ。
 ふたつ下の妹はふくれっつらで『お姉ちゃんなんか大したことないもん』とすねているけれど。

『千代子さんもきっとすばらしい治癒師になるわ』
 彩雪が慰めるが、千代子は聞く耳を持たない。
『姉妹ともに治癒師となれば国の誉れだ。だが、彩雪のほうが力が強い。この彩津国(あやつのくに)で一番の治癒師になるぞ』
 父がそう言うので、千代子はまたふくれっつらになる。

 彩雪は、困りながらも喜びを隠しきれなかった。
『私、期待に応えられるようにがんばります!』