目を合わせるまでの距離

喉がきゅっとして、にで息が跳ね、さんに届く前に視線が落ちた。

胸の奥が少し熱い。

私はすぐに言う。

「丸」

「オーケー」

彼は即座に視線を床へ落とし、取っ手から手を離す。

「今の、1.7秒くらい。十分だよ」

数字を言葉にしてもらうと、霧が少し薄くなる。

私はノートに書く。

「名前②:下の名前/1.7秒(影)/合図:丸/きもち:熱→軽」

台車は静かに進み、私は後ろから補助する。

噂がどこかでまだ残っていても、ここでの私の態度はひとつずつ積み上がる。

紙の枠の中で、今日の行がそろっていく。