目を合わせるまでの距離

午後、在庫の補充の合間に、私は挨拶をもう一度自分から積む。

腕章の違うボランティアさんに「お疲れさまです」と言い、影で三秒。

いち、に、さん。

噂の反証は、背中でやるものだ。

背中を丸めず、でも張り過ぎず。

湊さんが「水、裏から追加で運ぶ」と言って、台車を押す。

その取っ手に手を添える前に、私は自分の選択をもう一段。

ステップ2:下の名前(小声)

「……みなと」

小さな音で、いち。