目を合わせるまでの距離

喉の固さは残るけど、息は通る。

「ナイス」

彼はそれだけ言い、箱の向きを私から読みやすい角度にふっと回す。

追いかけない距離感が、呼吸を軽くする。

私はノートに書く。

「名前①:苗字+さん/3.0秒(影)/合図:なし/きもち:びり→平」

間を置いて、ステップ2を試すかどうか、自分で選ぶ。

胸の中のメトロノームが少し速い。

私は待つ**を選ぶ。

りこの「灯が決めな」が、内側で静かにうなずく。

ここで止めるのも、練習の一部だ。