目を合わせるまでの距離

うしろから中学生の子が「ありがとうございます」と言って通り過ぎる。

私は「どうぞ」と返す。

噂の反証は、特別なことじゃない。

当たり前を積むこと。

委員の仕事も回ってきた。

名簿の追記、配布ルートの矢印の書き直し、在庫の個数チェック。

私は一度、深呼吸を置いてから引き受ける。

途中、胸が波立ちそうになったら合図の**「丸」**を心の中で転がす。

丸は言葉だけでも効く。

ノートの端に、印が一つ、また一つ増える。

「委員:完了×3/きもち:均」

紙の枠は、今日の私の境界線だ。