目を合わせるまでの距離

光は、私が止められるものだ。

もう一本、女性のボランティアさんの肩の影で。

いち、に、さん。

喉の奥の固さは残っているけど、息は通る。

少し離れたところから、天野さんの声が呼吸みたいに届く。

「“名前で呼ぶ”の練習、後ででいい。今はやらないでもいい」

私はうなずき、ノートに書く。

「三秒(影):2.7・3.0/合図:なし/きもち:戻」

りこから再びメッセージ。

「既読だけで偉い」

「水のんで」

私はペットボトルの口を開け、ひと口で喉の温度を少し戻す。