目を合わせるまでの距離

ベンチの端で、私はノートを開く。

手の震えは、紙の上では線に変わる。


「SNS:匂わせ/目:0.0(影のみ)/合図:丸/きもち:ざわ→薄」

文字に名前は書かない。

書かなくても、何を指しているか自分だけが分かればいい。

書けるところまで書く。

書けないところは白く残す。

その白は、明日の余白になる。

作業へ戻る前に、三秒を一本だけ練習する。

相手は人ではなく、懐中電灯の丸。

いち、に、さん。