午前の空気は軽くなったはずなのに、体育館の壁にかかる掲示の影はまだ濃い。

配布の列が一段落して、私はベンチで三秒ノートを開く。

「見られた秒:3.0(影)/合図:なし/きもち:均」

鉛筆の先が紙に気持ちよく入る。

ポケットのスマホが、指先をかすめる震えで合図した。

クラスのグループとは違う通知。

指が勝手にスワイプしてしまう。

画面の上部、ストーリーのような円の連なり。

地域の匿名アカウントが、濡れた体育館の写真をぼかして載せている。

銀の毛布、配布の列、そして、斜めに切り取られた私の横顔らしき影と、腕章の先輩のシルエット。