目を合わせるまでの距離

「対話(短)/目:0.0秒(影のみ)/合図:なし/ことば:“練習を続ける”/きもち:手の温度、維持」

書いた瞬間、紙の枠が今日の境界線を一枚増やしてくれる。

配布の列は前へ進み、私は仕事に戻る。

数える。読む。渡す。

トン、トン。

必要なら合図の**“丸”**を口の中で転がす。

言わなくても、そこにある言葉は、心の懐中電灯だ。

遠くの区画で、誰かが笑った。

別の場所で、ありがとうの声が跳ねる。

体育館は大きな生き物みたいに息をして、私はその中で、自分の歩幅を守る。

三上の「ごめん」は、耳から遠ざかる。

私は追いかけない。

あの一言の続きは、なかった。

なかったことを、いま、はっきり受け取る。