目を合わせるまでの距離

どうして、あのとき確かめなかったのだろう。

振り向いて、誰が言ったのか見て、何に対しての「嫌い」だったのか、問い返せばよかった。

けれど私は、靴音を消してその場を離れた。

あの一歩が、いまも続いている。

男子と目が合う気配がするだけで、体が先に離れる。

知らない上級生の女子にも、同じふうに緊張する。

人の視線は、良いも悪いも、私の中の地震を起こすスイッチみたいだ。

放課後に寄るコンビニでも同じだ。

レジの人に会釈をして、バーコードの音を聞きながら、私は床の線を見つめる。

見なければ、傷つかない。