目を合わせるまでの距離

午後、雨はさらに弱くなったが、道路の様子はまだ悪いらしく、待機のアナウンスが続いた。

体育館の入口付近で風が群れになって入り、銀の毛布の端をぱたぱた揺らす。

私は補充の箱を運び終え、ベンチにノートを広げる。

欄はすこしだけ増えて、行がそろい始めた。

視界の端、遠くの区画で、三上の背中が見えた。

昨日よりも近い。

心臓が一度だけ強く鳴る。

波紋が立ち、ノートの線が一瞬ゆがむ。

私は手首に指を当てる。

トン、トン。

四つで吐いて、また四つ。

丸い光は今はないけれど、境界線は紙の枠がくれる。

「大丈夫?」

天野さんが、空になった箱を抱えたまま声を落とす。

「だいじょうぶ。……三秒、やってみる?」

言葉にしてから、自分で驚く。

「いいよ。目じゃなくて、影」