目を合わせるまでの距離

午前の真ん中、配布の列が一息ついた。

入り口横の自販機は止まっているのに、その前は日陰みたいに涼しい。

天野さんが「肩、並べて少し歩こう」と提案する。

正面より横のほうが、たしかに楽だ。

私はブルーテープの上を、彼はテープから半歩外側を。

歩幅だけ合わせて、目は前の床。

「いけそうになったら、三秒。床を見てからでいい」

私はうなずき、視線を少しずつ持ち上げる。

靴先、テープの端、彼のジャージの胸の縫い目。

いち、に、――さん。

眉間の影と、ほんの一瞬、目がかすった。

電気みたいなぴりっとした感覚。