目を合わせるまでの距離

配布の手伝い用のダンボールが、また入口近くに積まれ始める。

私は立ち上がり、母に「すぐ戻る」と目だけで伝えた。

昨夜と同じように、ラベルの活字は私を迎えてくれる。

視線を置く場所があるのは、ありがたい。

カイロ、紙皿、追加の水。

テープの端を折り返して、取りやすいように貼っておく。


「水は一本ずつで回します。小さなお子さんは先にどうぞ」

落ち着いた声が背後からする。

天野さんだ。

私は顔を上げず、箱の向きを彼の方へ回す。

ライトの丸は小さく、でも境界がある。

昨夜、境界が輪郭になってくれたことを思い出す。