目を合わせるまでの距離

彼は自分の左手首に右手の指を当てて見せる。

私は毛布の中で、自分の手首を探す。

体が固い。

指が落ち着かない。

場所が定まらない。

彼は続ける。

「見つからなくても大丈夫。探してる間に、呼吸が勝手に整うこともあるから。焦らなくていい」

急がせない言い方だった。

私は手首の骨を見つけ、その横の柔らかいところを少しずつずらす。

どこも同じ皮膚で、同じ鼓動が無いみたいだ。

焦る。

数をまた落とす。

「ここが骨。その少し内側」

彼はライトの丸に直接影を落とさないよう、輪郭の外側ぎりぎりで位置を示した。

私は指をそっと滑らせる。

――あ、小さく、跳ねた。

指に、豆粒ほどのリズム。

途切れず、そこにある。