目を合わせるまでの距離

作業はいつのまにかリズムになった。

私はラベルを読み上げる。

「乳不使用、七大アレルゲンなし。原材料、じゃがいも、野菜エキス…」

「了解」

箱が開き、カッターの刃が紙を裂く音。

誰かが位置を整え、別の誰かが運び、仕分けたものが列を作る。

視界の端で、先輩の手が素早く、けれど急がずに動く。

濡れた前髪は額に貼りついているのに、息が乱れていない。

落ち着いた速さ。

体育館の奥から別の声。

「天野ー、この水も頼む」

「はーい」

――天野。て・ん・の。