目を合わせるまでの距離

配布の列が落ち着くころ、ダンボールは空に近づいていた。

小さな「ありがとう」があちこちで弾む。

床に点々とついた濡れた靴跡は、少しずつ薄く乾いていく。

私は自分の区画へ戻り、銀色の毛布の端を指でつまんだ。

父は懐中電灯の明るさを確認し、母は濡れたタオルを絞って袋にしまう。

体育館の高い壁の上で、雨音が絶えず回っている。

膝の上で懐中電灯を軽く握り、床に小さな光の丸を作った。